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Re: 色彩の星を____* ( No.3 )
日時: 2014/03/22 14:07
名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)

————【Prologue】*

雲一つない快晴としか例えられない空を見上げ、一人少女は憂鬱の溜息を吐く。
四角い小さな窓で縁取られた空は、なんだかとても窮屈で狭そうに見える。
後ろにあるドアがトントンとなる。嫌でも響くその音に、何度目かもわからない溜息を吐き、どうぞ、と短く応える。

「お嬢様、もうすぐ剣の稽古に参りましょう」
「・・・うん、わかったのさ」

自分は剣術なんか知りたくないのに、と複雑な気持ちを持ちながら扉の外へ足を運ぶ。執事の燕尾服の黒色は相変わらず濁ってない。
ただただ長い廊下を歩き続け、ある部屋の扉に目をつける。
古びた扉でメイドも掃除をしていないという。綺麗好きな父が掃除をするなと命令しているそうな。可笑しな話である。
少女は幼いころからその部屋に興味を示した。が、厳しい父は頑なにその扉を開かなかった。
どうして、と駄々を捏ねたが返された言葉は「子供は見ちゃいけない、」。理不尽すぎると、今でも腹立たしく思う。そして大分成長した今でも入らせてくれないのだから、尚更理不尽だ。
話は突然にも変わるが、父は前の世界の古文を集めるのが趣味だった。何でもこの世界は"再生の星"という創世の宝石が創ったと言われている。
前の世界というのはその"再生の星"がこの世界を創る前の世界の事。文字にしてみると少しややこしい。
父は帝国騎士団に仕える騎士であるが、趣味でその古文を研究するのが好きだった。
時々父はその研究を自慢げに話していた。少女は、それを聞くのがとても好きだった。
少女はそれ以来、古代のことにそこはかとない興味を持った。ロマンを感じたのだ。
父が話してくれた古文に載っている場所————遺跡。彼女の夢はそれを探検してみることだった。
しかし、現状を見れば分かる通り、代々帝国騎士団に騎士を送る家系に生まれてしまったが為に、趣味として調べることしか出来なかったのである。
こうして、何時もやりたい事を封じ込め、剣術を嫌々やっているのであった。

少し広い庭に出ると、花壇に植えてある花が香った。花舞い散る春の季節、やはり彩るは花だ。

「さあ、剣をお構えになって」

前を歩いていた執事が後ろを振り向き、模擬刀を構えた。少女は腰に差しておいた模擬刀を静かに向き、構える。
そして何時も通りの稽古が始まる————と思っていた。
模擬刀を構えた執事に、あるメイドが走って何かを伝えたのだ。メイドの様子は何処か焦っている様な悲しんでいる様な、悼んでいる様な。
メイドから伝えられた事を耳にするなり、執事は大きく目を開き「真・・・ですか、」と呟いた。ただ静かにメイドは首を振った。
暫く放心した状態が続き、執事は少女の方へ歩き出す。
そして、動揺を隠せないゆっくりとした口調で話し始めた。

「カトレアお嬢様、心を落ち着かせて聞いてください・・・

 ・・・お父様が、戦死なされました・・・」

————少女カトレアの物語が、始まる。