コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 色彩の星を____* ( No.6 )
- 日時: 2014/03/22 23:03
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
目を開いたとき、眩しい位の緑と強い日光の光が自分の視界を埋め尽くした。
しかしそれは遠ざかって、背中の方にごつっ、と鈍い痛みが走る。どうやら自分は落とされたようだ。
「あいってて・・・」
むくりと上半身を起こすと割とお気に入りの洋服に葉っぱが大量に気付いた。
試しに服を嗅いで見ると、うん、自然の匂いがする。
辺りを見渡すと、木が不規則的に並んでいて根元から雑草等が沢山生えている。色艶やかな緑で埋め尽くされて、何だか空気さえも美味しく感じる。
ふと近くにあった花に目を遣った。
その花は光の当て方によっては赤にも見えて青にも見えて黄色にも見える。まるで虹色に色を変化させることの出来る花を見ているようだった。
「・・・綺麗だろ、それ」
ふと馴染みのある声がした。その方向に目を遣ると、呆れ返った表情の幼馴染が其処に居た。
「セイカ!何で此処にいるのさ!」
「どうもこうもねぇよ、だって此処、カトレアを誘ったネリアンの森だぜ?」
「ネリアンの・・・えっ」
素っ頓狂な声が出た。なぞの不思議な光に包まれてやってきたのが未知の世界!・・・ではなく、ただの近所の森なんて。
少しがっかりしながらもセイカを見つめる。すると後ろに森に似つかわしくない物が見えた。
「ねえセイカ、あれなんなのさ」
「ん、あれか?・・・俺も良くしらねぇけど・・・何かの遺跡とかじゃね?」
「遺跡・・・」
そうか、遺跡。あれが遺跡だったんだ、こんなに近くにあるだなんて。
自分がし、死神?と契約したから此処に連れてこられたんだ。
もともと契約を行うのはその契約を交わすものの前と決まっている、が、今回は目の前ではなく少し離れた場所だ。
しかし、契約の合図は何時何処でも発動でき、合図を出すと契約した場合、主霊がこちらに来る。
今回は正式な契約をしていない。だから主霊となる遺跡の前へやってきたんだ。そして自分がこの場所に転送された理由は、契約をしていない状態で合図を出したから。
その場合、主霊となる神のほうが偉いということになるため、立場が低い自分が転送された。
なるほど、と一人合点しているとセイカが怪しんだ表情でこちらを覗いた。
「・・・なに一人で納得してるような顔してんだ?」
「あれ、バレたんだけどな」
「いや、割と表情に出やすいタイプだぞ、お前」
そうけらけら笑って指摘されたことが妙に腹立つけど、今追い求めてきたロマンの宝庫である遺跡を前にして、この衝動を抑えられる訳が無い。
すくっと立ち上がると、セイカが心配そうに声を掛けて来た。別に平気、と短く答えれば、彼はそのまま俯いた。
その洞窟、もとい遺跡に吸い込まれるようにして足を運んだ。苔で彩られた外壁は、妙に神秘的だった。
遺跡の中に近づくたびにひんやりとした空気が流れ込む。冷えるわけも無く、逆に探索に燃え始めた。
今はもう、降霊術とかどうでも良い、自分は、僕は念願の願いがかなう!
遺跡内へ一歩踏み出したとき、カツンと音が響いた。その時、
「おい、ちょっと待てよカトレア!」
静寂を保っていた遺跡にセイカの怒鳴り声が響いた。
驚き、後ろを振り返ると、さっきの位置のまま動いていないセイカが少し震えていた。その背中は、何だか悲しくも思えた。
「お前どうしたんだよ、その洞窟に何があるっていうのさ…」
「・・・自分が夢に見たもの、なのさ」
何かを抑えるような声でそういった。
セイカはつかつかと此方に歩み寄って、カトレアの肩を思いっきり掴んだ。それは割と痛くて、男の子らしい力が入っていた。
「・・・連れてけ」
「えっ」
「連れてけ、カトレアに万が一でもあったら俺、親父さんに顔向けできねえ」
「・・・」
それ以外の何かが絡んでいるような気がした。
でも、真剣でありながらも泣きそうなその声と懇願を聞き、自分は肩に乗った彼の手を柔く握った。
「父上はもう死んだのさ、でもついて行きたいっていうなら着いてきて欲しいな・・・」
「カトレア・・・」
「・・・なんてね」
そういってウインクすると、セイカの顔はポカンとアホ面になり、瞬間に顔を染めて怒鳴った。
自分はそれを微笑ましく思いながらも、行こう、と呟き、二人で洞窟内に入った。
軽やかな笑い声と、イライラを隠せない声が洞窟内に響いて、暗闇に消えた。