コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 色彩の星を____* ( No.15 )
日時: 2014/04/01 11:43
名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)


「ここがチャロアの街な〜!海が綺麗なのさ〜!」
『だね〜今の世界にはこんなものもあるんだ〜』

広い平地を抜けたら其処は茶レンガの家が立並ぶ住宅街だった。
人々も活発に生き生きとしていて、お隣さんやご近所さん同士のやり取りが強そうにも見えた。
本当は最初、コーラルの町に行こう、と言っていたのだが、途中でセイカがこの街を提案してきたため、この街に来ることになった。
カトレアが思っていた道よりも遠くはなるが、コーラルの町も此処経由で通れるらしい。
それにセイカ曰く、此処の近辺で遺跡らしい洞窟を見た、という証言があった為、小さいながらも最近急成長したというこの街、チャロアにやってきたのだ。
カトレアは青く澄んだ海に目を輝かせ、タナスは町並みをキョロキョロと見回している。
それは良かったのだが、ただ一人セイカは呆れため息を吐いていた。

「ほらほら、セイカもあの海をみるのさ!」
「…喜ぶのは良いんだけどさ、」
「『ん?』」
「…なんで俺たち、魚介レストランに居るんだ?」

そう、今まで見ていたのは、広く開けた窓から見ている景色であり、カトレア達は今、この近辺で有名な魚介レストランにいた。
理由はカトレアの一言だった。

「魚が食べたいのさ」

街に着いた瞬間、そう言い出した。
元々よく食べる食いしん坊だったため、セイカから魚が美味しい、と言われてこの街に来たということもあるのだが、
「腹が減っては遺跡調査もできないのさ」と言い、すたこらレストランに入ってしまったのだ。
金銭的な面で大丈夫なのか、と問いかければ「亡くなった父の財布からいっぱいもってったのさ」と言った。
「おいおい、それってネコババなんじゃ…」とセイカは言いかけたが、カトレアはセイカを思い切り睨んだ。
そしてまたもや大爆笑しているタナス。やはり理由は夫婦みたいだ、と。
早く引っ込めこの死神!と思ったセイカの心情は、未だ誰も察していない。

「お待たせしました、スペシャル海鮮丼です。ごゆっくりどうぞ」

笑顔のウエイトレスが片手じゃ持ち運べないような丼を持ってきた。トレイって便利なんだと感じた瞬間だった。
さて、カトレアの前に持ってこられたスペシャル海鮮丼。これまた凄い威圧感だった。
まぐろ、カニ、いくら、ウニ、エビ、イカ、その他諸々。具材だけで見るとごく普通の海鮮丼だが、問題は量である。
先ほど大きな丼と言ったが、箸でまぐろ等の具材をいくらどけても米が見えない。もしかしたら米さえも無いのかもしれない。確かに海鮮丼だ。
カトレアはゴクリと生唾を飲んだ。箸を両手で掴み、手を合わせた。

「…いただきます」

運命の、瞬間だった。しかし、その時、この神聖な瞬間を邪魔する雑音…もとい声が隣の席から聞こえてきた。

「お待たせしました、スペシャル海鮮丼です。」

カトレアは箸を止め、隣を見た。するとそこには白髪のフィロイドがいた。朱色のヘッドフォンが特徴的で、相手もこちらを見ている。
瞬間、これは悟った。こいつは…ライバルなんだと。
カトレアはもう一度、その相手も同じように顔の前で手を合わせている。
ゴクリ、とその様子を見ていたタナスは一言、呟いた。

『レディ…ファイッ!!!』

二人は同時に、海鮮丼に箸を突き立てた。


「カトレア、お前実は馬鹿だったんだろう?いや馬鹿なんだろ?」
「うぅ〜そんなに馬鹿馬鹿言われたくないのさ〜」
『まあ主も楽しかったみたいだし、良いんじゃないかな?』

勝負は引き分けだった。カトレアは食べ終わった直後、相手を尊敬と敵意の目で見ていた。相手も同様にカトレアを見ていたので、ライバルとして認められた…のかもしれない。
しかし、そんな光景をずっと眺めていたセイカは、本当に馬鹿馬鹿しいと思った。これがカトレアにしかわからないロマン、というやつなのか。
そのあとでカトレアはお腹を下し、トイレに籠っていた。後日のことを考えると相手の方が勝ちだろう。
セイカも呆れ返って、なんでこんな馬鹿な幼馴染がいるんだろうと頭を悩ませた。
対してタナスは、これがフードファイターだね!と一人で盛り上がっていた。
最近の死神は余計な知識をずれて覚えるから、困りものだ。

「じゃあ、本題に戻るけど、遺跡っぽい洞窟って何処にあるのさ」
「とりあえず、さっき周辺の地図貰ったぜ!」
『セイカくん、ナイスだね!』

そう言ってセイカは地図を広げ、二人はその間から覗き込んだ。
ほう、此処は森に囲まれているんだ、と感心しながらタナスが呟くと、突如大きな音が三人の耳を劈いた。

「だーかーらっ!我が治してあげるって言ってるでしょーっ!!」
「居住民の言葉なんか聞けるか!引っ込んでろ小娘!」
「なっ…!酷い言い様!最低!」

何だなんだと人垣でが出来始めた。ちょうどその近くで地図を眺めていた三人は、状況が把握できるところで見れた。
どうやら喧嘩、らしい。ただ治す、とか言っているから、
恐らく叫び出した少女が何か治そうと言っているのだが、男はそれを拒んだということになっているんだと思う。
少女は遠くから見ても背が低く、流れる黒髪を緩く一本に縛って、白色の独特な…そう、民族衣装を来ていた。
金色の瞳が輝いていて、目元に描かれている赤いボディペイントが特徴的だ。

「あーれれ、何か喧嘩やってるねー!僕も混ぜて貰おうかな〜」

そうのんびりとした声が聞こえたので振り返ってみると、そこにはレストランでいた白髪のフィロイドがいた。
彼はカトレアを見つけると、すぐさま駆け寄り手を振った。

「あっきみ!さっきのレストランの子だよね!ああ、やっぱり近くで見ると可愛いなぁ〜よく食べるし、今度僕と高級レストランでも…」
「…何言ってるのさ、キミ」
『なるほど、これがナンパってやつだね!』
「関心するところ違うぞ、それ」
「そうそう!僕はナンパじゃないよ!ただ可愛い女の子を見かけると声を掛けたくなるんだよ!」
「だからそれがナンパって言うんだよ!!!!!」
「あーもーっ!ごちゃごちゃ煩いわねー!外野っ!!!」

突如としてやってきたフィロイドの青年が騒がしくしたお陰で、静かに見ていた野次馬の中でも目立ってしまったらしい。
黒髪の少女はこちらを指差して、敵意むき出しの表情をした。
そして彼女は、背中の巨大な袋に入れてあった槍を取り出した。四人は直感的にやばい、と感じた。

「待ちなさい!!邪魔者おぉぉぉぉ!!!!!」

「おい、やべーぞ!逃げようぜ!!」
「あっ、あの女の子も可愛い!でもきみも十分…」
「うわっ!いきなり触らないで欲しいのさ!」
『これが高度な…ナンパテクニック…!』
「いいからとりあえず走って逃げろっ!!!」

悲痛なセイカの叫びが聞こえた。