コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 色彩の星を____* ( No.16 )
- 日時: 2014/04/03 12:04
- 名前: 唄華 (ID: A1.ZfW1L)
「…ったく、何なの…お前ら揃いも揃って馬鹿なの…」
「だから馬鹿馬鹿って言わないで欲しいのさ!」
『そうだよ!偉大なる死神様に馬鹿はないでしょ!馬鹿は!』
「じゃあなんて言えばいいんだよアホンビ!」
「何処よ邪魔者!我が直々に成敗するんだから、大人しく出てきなさい!」
「ああもう!言ってるそばから来ちまった、こっちに逃げるぞ!」
「…あの子、怒ってる顔も可愛いね…あの幼さ、僕の胸にキューンとくるよ…」
「ロリコン黙ってろ!!逃げんぞ!!」
どうしてこうなったかというと、偶々近くで起こった喧嘩の真っ最中にカトレアたちが騒がしくして、喧嘩していた一人の少女の逆鱗に触れたということだ。
しかし、逃げているはずの当人たちは、それぞれマイペースでゆったりとしていた。
一人焦っているセイカは、自分が馬鹿みたいじゃないか、と思い始めもした。
追いかけてくる黒髪少女の手には、未だ槍を持っており、この街で殺傷沙汰とか冗談じゃねえ…、と思い逃げていた。
だが、少女も中々しぶとく、一回斬ってやんないと許さない、みたいな形相で探している。怖すぎる。
そこでマイペース軍団のうち一人、銀髪のフィロイドが唐突に言った。
「よし、楽しかったし、僕もう他の女の子のところに行こうかな!」
「…はぁ?」
「じゃーねー!楽しかったよー!!」
そういって隠れていた街角から、黒髪少女の方へ出た。勿論黒髪少女には見つかるのだが、銀髪のフィロイドは笑顔で此方を指差した。
「さっきの騒がしくしてた人たち、あの街角に居るよ!僕はただ、巻き込まれただけ」
「そう、なの…うん、有難う!」
これは、やばい。瞬間に察した。
どんどんと黒髪少女は此方に近づいてくる。セイカはマイペース軍団…銀髪フィロイドがいなくなったからアホンビなのだが…を連れて逃げようとした、
が、あっけなく見つかってしまった。
黒髪少女の顔は、幼く可愛らしい作りをしていたが、カトレアたちを見つけると、その金色の瞳をきりりと釣り上げて、槍を構えた。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!すまん、すまんってば!」
「ごめんじゃ許さないよ!我の見返し作戦を邪魔したやつ、絶対に許さない!」
「おいカトレア!逃げるぞ!」
セイカはそう耳打ちするも、カトレアは呆然とした目で少女を見つめていた。
槍を今にも突き出しそうな態勢を取った少女は、カトレアのその視線に気づくと訝しげな目でカトレアを見た。
「何よ、さっさと我に降参しましたー、みたいな顔してよ」
「…ねえキミ、ハーフ…だよね?」
時間が止まったかのように場が固まった。海から聞こえる波の音だけが鮮明に聞こえた。
ハーフはそこまで珍しいものではない。ヒューマとエムリタ。相容れないというわけでもないし、この世界はそういった種族が混じり合っている。
だが、ハーフというのは見分けがつかない。ヒューマとエムリタの違いなど、魔力の使い方ぐらいで、他にはあまりない。
しかし、ハーフはどちらともの能力を中途半端に継いでしまうもの、そのためあまりいい立場には立てない。
黒髪少女の表情は、驚きを隠せないという顔だった。まあ、普通見分けられないものを、いとも簡単にわかられてしまえば、驚くのも当然だ。
カトレアはゆっくりと少女の目元を指して、静かに言い始めた。
「本で読んだことがあるのさ。体の何処かに印をつけた民族がいるってな。
目元に印をつけているのは成人していない証、そして赤の意味は…混ざりもの。つまりキミはハーフなんじゃないかなって思ったのさ」
西の方…だった気がするのさ、と付け加え静かに指を下ろした。
黒髪少女の顔は、みるみる内に萎んでいき、比例するように瞳が輝いてきた。
そして槍を下ろし、カトレアを指さした。その表情は喜んでいるようにも見える。
「良くわかったね!そう、我は西の大陸に住む民族、アルテラ族の一人!そしてハーフ!
あなた、結構物知りなのねーそんなフリフリ着てるのに…良いわ、許してあげる!」
黒髪少女はにっこりと笑った。
セイカは許す、という言葉に安堵の息を漏らし、カトレアは、フリフリ…、と呟きながら自分の服装を見つめた。
黒髪少女はとりあえず、と言い人差し指を立て、先ほどいた住宅街の方へ身を翻した。
「こんなところで話すのも嫌だから、何処かゆっくり話のできる所へ行きましょ?」
「…えーっと、話って、何?許してくれたんじゃないのか…?」
「はぁ?何言ってるのお馬鹿さん、それじゃない!あなたたち、遺跡を探してるんじゃないの?」
馬鹿…っ!?とセイカは身を持ち上げ、カトレアはうん、と頷くだけだった。タナスはいつの間にかいない。
ちらりとセイカはカトレアの指輪を見た。ブラックオパールが、妙に綺麗な色で存在していたから、多分見つかった時にしまったのだろう。
「遺跡…!そうなのさ!自分たちは遺跡を探しにきたのさ!」
「我のじぃちゃんがらしい洞窟に潜ったんだ、そしたらその洞窟から竪琴が聞こえてね。
でもなんか、途中で帰ってきちゃった。
まあ詳しい話は、近くの店でもしてあげるわ。良い魚介レストランがあるの、付いてきて」
セイカは、もしかしてその魚介レストランって…と目元を引きつらせたが、とりあえず黙ってついていくことにした。
今カトレアを押さえ込んでも、きっと聞かないだろうし。
海の音が穏やかに、そして涼やかに響いた。