コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: くろウサギ ( No.8 )
日時: 2014/03/30 18:59
名前: 暁 (ID: z5Z4HjE0)



 この町も淡い桜の優しい色に包まれた。
 白都紗雪(しらと さゆき)はパステルカラーのカラフルな建物の間を通り抜け、上機嫌で歩き慣れた通学路を歩いていた。少し急な坂をスキップ気味に進んでいく。
 いつもとは違う気分。なぜなら今日は新学期が始まるから。新学期といっても三回目、中学三年生。学校の最上級生になったのだ。

 学校の門を通ると校庭はまだ静かだった。どうせ校舎もまだいないのだろう。紗雪は教室へは向かわず校舎の裏に足を向ける。そして小屋の金網部分の前に立った。
「君達、元気にしてた?」
 紗雪の問いかけになんの反応もない。それは勿論のことだ。だって話しかけているのは。
「うさ太。元気にしてたかな〜?」
 兎だもの。
 さほど小さくはない飼育小屋だ。その小屋に兎が五羽飼われている。うさ太というのは兎の名前。
「うさ吉、うさ助、うさ五郎。君達は?」
 これも兎達の名前。ネーミングセンスはさておき、これでも一生懸命考えたのだ。実は意外と気に入っていたりする。兎達につけた名前を呼び、話しかけるといういたい光景だがそういうわけではない。
 兎達は口をモゴモゴさせ耳だけをこちらに向ける。