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Re: くろウサギ ( No.23 )
日時: 2014/04/27 15:41
名前: 暁 (ID: z5Z4HjE0)

 そうなると気になるのは、隣の男子だ。「氷雨くんでありますように」と心の中でひっそりと唱えながら、女子達の間を通り机に向かう。
 すると見えた。
 今日の新しい記憶の中にいる人物が。
「あ……」
 ぼさっとした長い黒髪と黒縁の眼鏡。
 朝会った、助けてくれた男子。
 言葉を隠らせながら自分の席につく。するとその男子が紗雪を見つめてきた。長い前髪の隙間から見える目は、優しくではなく鋭い目つきで。助けてくれた時とは全然違う雰囲気だった。それでかたまる紗雪。
「……」
 でもしばらくすると興味をなくしたというように目線を窓の外に向けた。まるで自分が知っている黒兎、『君』のように。
「あ、あの……今日校舎裏で助けてくれましたよね」
「……」
「ありがとうございます。おかげで転ばずにすみました」
「……」
「飼育小屋に用がありまし」
「一つだけ」
「え……?」
 紗雪の言葉を遮るように発した言葉は、紗雪の頭に疑問符を添えた。目の前にいる男子は窓の外を見たまま、こう言う。
「僕に話しかけないで」