コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: オカルト研究部には天使がいるっ!(合作)イラスト有り ( No.20 )
- 日時: 2014/04/19 15:16
- 名前: 夕陽 (ID: aUfirgH8)
番外編
兄弟編〜森園兄妹〜
「ただいま」
誰もいない部屋にむかっての挨拶はむなしくなるが小さい頃からの習性なのでやめられない。
「おかえり」
どうやら、耳の調子が悪いようだ。幻聴まで聞こえるとは……。
「どうして無視しちゃうの?」
アタシは渋々振り向くと
「何でここにいるんだ?」
その相手に疑問を投げかける。
「だって綾乃のお兄ちゃん何だから別にいても不思議じゃないでしょ?」
確かにこいつはアタシの双子の兄だ。
二卵性なのであんまり顔が似ていないが、こいつはなぜか顔が女の子みたいに可愛い。
色白の肌や、長くてきれいなまつげ。にっこり笑うと出てくる八重歯も凄く可愛らしい。
なんで男として生まれてきたのか謎だ。
でも、兄だからといってもここに入れるはずはない。なぜなら
「アタシ、一人暮らししていて合い鍵は隼人にしか渡していないんだが」
そもそも、家族に渡していないからである。だって家族に渡したらこいつが絶対私の様子を見に来るから、あえて渡さずに幼馴染の隼人に渡したんだぞ?
「そんなの、僕には関係ないよ! 愛さえあれば何でもできるんだから!」
ちなみにアタシが自分の兄なのに全く尊敬しないのも、むしろ嫌っているのもこの性格だからである。うざったい。
「どうでもいいけど、どうやって入ったの? ドアも窓も全部閉めたはずだけど……」
アタシは毎回外に出るときはそこらへんをチェックしている。泥棒に入られたら困るしな。
「ふっふっふ、それはね——」
「笑い方うざいからやめろ」
こいつは悪役に一番合う人物№1だと思う。
「綾乃にうざいって言われた……。僕はもう生きている価値がない」
「だったら死ね!」
これは実際そう思っているわけではないので軽く受け流す。
「綾乃ひどい。昔はごめんね、お兄ちゃん死なないで! って泣いてくれたのに」
絶対嘘だろう。
「嘘じゃないし!」
心が読めてるのか……?
「当たり前だよ! 愛に不可能なんてない!」
もしアタシの力が強かったらこいつを殴ってたと思う。
「別にいいよ。綾乃はそういうことでしか愛情表現できないもんね!」
訂正。アタシの力が全くなくてもこいつを殴る!!
「こんなのぜんぜん痛くないよ! 綾乃の愛情がこもっていると思えば」
どうしてこんな兄になってしまったのか……。こいつにばれないように一人暮らししてきたのに。三年間欺きとおせたと思ったのに……。
「まあ、ここに住んでいることは一人暮らしはじめたときから知っているけどね」
そんな、馬鹿な……。
「ほんとだよ。これくらい朝飯前だよ!」
誇らしげに胸を張っているがそれは決して威張れる事じゃない。
「はじめは楽しそうだったから放っておいたけど、最近疲れた顔をするのが去年より少し増えたから励ましにきただけ。すぐ帰るから心配しなくていいよ」
いきなり真剣そうな顔になったのでアタシは黙り込んでしまう。
「まあ、これで大丈夫かな」
いつものようにアタシの頭をなでてにっこり笑う。
やっぱり、可愛い顔だな。羨ましい。
「ごめんな、心配かけたりして」
「いいよ。僕は綾乃のお兄ちゃんだからね!」
「もう帰るだろう? 途中まで送っていこうか?」
「うん。でも送ってくれなくてもいいよ。また明日」
そういってドアが閉まる。
やっぱり何も言わずに出て行くのはまずかったかな。
たまには、家族にでも会いに行こう。
しかしそのとき、アタシはまったく気づかなかった。
あいつの別れの言葉の違和感を。
次の日、休日なので学校はない。
アタシは家族のところに行く事にした。
準備を整えて出ようとしたその時、来客をあらわす音が鳴った。
——誰だ? こんな朝早くに。
今は7時ちょっとすぎだ。一体誰だろう?
疑問に思いつつドアを開けると
「隣に引っ越してきた森園久遠です! よろしく!」
「…………」
無言でドアを閉める。あれは幻だ。そうだ、アタシの兄はもう帰ったんだ。
もう一度あける。
「ひどいなあ、綾乃。閉める事ないじゃないか」
全く変わらない現実がそこにはあった。
「何でここにいるんだ!」
とにかく、こういうことは連絡してほしい。