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Re: オカルト研究部には天使がいるっ!(合作)イラスト有り ( No.30 )
日時: 2014/07/06 00:09
名前: 夕陽 (ID: kcW8BmfX)

番外編
過去編〜樽井和輝〜

「和輝も、お兄ちゃんになったんだね」
 弟と妹が生まれたときのお母さんの言葉。
 お兄ちゃんという響きにくすぐったさを覚えたことを今でも思い出せる。

 そして、五年ほど経ち僕は小学六年生になった。
 弟たちは五歳だ。
 ある日、妹の方、わかが熱を出した。
 お母さんは買い物に行っていてあと五分くらいは帰ってこないだろう。
 なので僕は、わかの看病をすることになった。和人には任せられないし、お父さんもきっといても出来ないだろうから。
 僕は幸運な事に簡単な家事はできる。
 だから、僕はいつも風邪のときお母さんにしてもらっている時のように熱を測った。

——39.0

 表示されたのはありえない数字だった。
 熱さましシートを申し訳程度にはり、次はおかゆを作ろうと台所に行く。
「お兄ちゃん、わかが苦しそう……」
 その時、和人が焦った表情で台所に駆け込んできた。
「大丈夫、今からわかは治るから」
 安心させるように笑うと和人も少しだけ笑った。
「それならよかった。……ところで何か作るの?」
 和人は首をかしげる。
「うん、おかゆを作ろうと思うんだ」
「だったら、カレーライス作りたい」
 僕の意見に反対というようにわかの大好物を作りたいと言った。
 確かにカレーライス作っても良いけど……病人に食べさせても平気かな?
 悩んでいた時、扉が開けられる音がした。
 きっとお母さんが帰ってきたのだろう。
 和人はその音を聞きつけると玄関までダッシュした。

「お母さん、わかが苦しそうだからお医者さん連れて行って!」
 訴えるようなこえにお母さんは
「そうなの? わかはどこにいるの?」
 おっとりとした表情から一転引き締まった表情に変わる。
「寝る部屋」
 和人が呟くとお母さんはいつもより速いスピードで寝る部屋に行った。

 そしてお母さんとわかが病院に行っている最中、僕らはカレー作りをしていた。
「わか、大丈夫かなあ」
 しかし、和人はこんな調子でずっと弱音を吐いている。
「ねえねえ、わか大丈夫だと思う? 死んだりしないよね……?」
 涙目でこちらを見る和人。
「大丈夫だろ。お母さんも言ってたじゃん。ただの熱だと思うって」
 一応お母さんは僕らを生む前は看護師だったらしい。
 だからこういうことに関しては人一倍信頼できる。
「そうだよね……? そうだよね……」
 和人は納得しなそうにもしぶしぶ引き下がる。
「わか、大丈夫かなあ」
 ……全然引き下がってなかった。
 そんなこんなでカレーが完成した。
 カレーのとてもいいにおいが部屋に満たされる。
 そしてその少し後、
「わか、ただの熱だってー」
 といつものように能天気なお母さんの声が聞こえた。
 その言葉に和人はホッと胸をなでおろした。
「でも一応見といてくれる? お兄ちゃん」
 台所まで来てわかの世話をお願いされたので僕は寝る部屋に行く。
 そこには顔をりんごのように真っ赤にしながらも前に比べれば全然苦しくなさそうな表情で横たわっていた。
「大丈夫?」
 和人が何回も言っていた言葉を僕も言った。
「……うん。そういえばね、今日すごく不思議なものを見たんだ」
 わかがそういって少し唇の端を持ち上げる。
「どんなの?」
 僕は興味本位で訊く。
「あのね……妖精がいたの。その妖精が……病気、治してくれるって」
 そこまでわかは言い、眠り込んでしまった。
 その顔はとても幸せそうだったので僕は布団を掛けなおしてから足音を立てないようにゆっくりと部屋を出た。

—END—

更新、遅くなってすいませんでした。
少し、更新できない事情があったので(言い訳)
智菜、更新ありがとう。

というわけで和輝の過去です。少し呼び方や一人称変わっている人もいますがもともとはこう呼んでいたという事なので間違いではありません。