コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- オカルト研究部には天使がいるっ!合作 イラスト・声有り ( No.39 )
- 日時: 2014/07/24 10:00
- 名前: 夕陽 (ID: KVjZMmLu)
番外編
過去編〜黒野奈美〜
「わあ! すごい!!」
私はその旅館を見るなり歓声を上げた。
だって何もかもが初めてだから。
こうやって旅館を見るのも。
家族と旅行に行くのも。
そして、家以外の場所で泊まる事も。
来年、四年生になったらお泊り会みたいのが学校用事であるらしいけど、三年生の私はまだだ。
中三になる私の姉、奈々によるとお泊り会はとても楽しいらしい。
今からとっても楽しみだ。
「奈美、入るよ?」
お姉ちゃんが私を呼んだ。
「あ、待ってよ〜」
私は置いてかれないようにでも転ばないように走った。
「折角旅館来たんだし、温泉はいるか!」
お母さんが元気いっぱいに宣言する。
「でも、男湯一人しかいないから寂しいなあ」
お父さんは対照的に寂しそうだ。
実際私の家族はお父さんとお母さん、姉、私、妹という構成で男はお父さんしかいない。
「まあ、後で会えるでしょ」
お母さんがそう笑って温泉に行くことになった。
「気持ちいい〜」
お母さんは肩まで浸かっている。
「寝ちゃいそう……」
お姉ちゃんは半目になっている。なぜか知らないがお姉ちゃんは基本目がパッチリ開いていることはない。
私が物心ついた時からそうだ。
「奈々お姉ちゃん、寝ちゃだめ」
舌足らずな口調で妹の玲奈が注意する。まだ年長の妹は少し大人っぽく振舞おうとしているが私から言わせてみれば子供が一生懸命大人になろうと背伸びしているみたいで微笑ましくしか見えない。
「分かってるよ、れいちゃん」
お姉ちゃんはそういってれいちゃんの頭をなでる。
れいちゃんは気持ち良さそうに目を細めた。
その細めた目が私のところで止まる。
「奈美お姉ちゃんも入ろう?」
どうやら私がまだ入っていないのを不思議に思ったようだ。
「うん、今入るよれいちゃん」
私はそういって肩まで湯船に浸かって心の中で30秒数えてから出た。
「さっぱりした〜」
お母さんが鼻歌を歌いながら部屋に戻った。
「お父さん早いね」
れいちゃんがそういって目を丸くする。
部屋に戻った時にお父さんがいるのでびっくりしたんだろう。
私もびっくりしたし。
「ふふふ……。お前達のためにプレゼントを買ってたんだよ」
じゃじゃーんと得意げに見せるお父さんの手元には、
——三つのプレゼントの包みがあった。
全部同じ大きさで包みの大きさは5cmにも満たない。袋の色が全て違い、赤、青、黄色の三色だ。
「さあて、どれがいい? といっても中身はほとんど一緒だがな」
お父さんがそういうとれいちゃんが一番に声をあげる。
「れいちゃん、これがいい!」
選んだのは赤い包み。
「私は黄色がいいな〜」
私がそういうとお姉ちゃんは
「じゃあ、私は青」
と青い包みをとった。
「皆でいっせーので開けようよ!」
私の提案に二人は
「うん」
と賛成の意を示してくれた。
「いっせーの」
そしてふたを開けると
——三者三様のネックレスが包みに入っていた。
「れいちゃんのは梅だあ」
れいちゃんは梅がモチーフにされているネックレス。
小指の先ほどの小さな花が可愛らしい。
「私のはユリだよ!」
細長い花が小さい私にはとてもきれいに見えて私はうっとりしてしまう。
「私のはコスモス」
お姉ちゃんの手にはコスモスが乗っていた。きれいな赤色だ。
「ふふふ」
お父さんがいきなり笑い出した。
「ど、どうしたの?」
気が狂ったのかと思い訊ねると
「だってお前らお父さんが思っていたとおりに包みを選んだからな。おかしくなっちゃって」
そんなことか。びっくりした。
「そういうことか」
お姉ちゃんもほっとしたように胸をなでおろす。
「それには意味があるんだ」
ぽつりとお父さんはもらす。
しかし小声だったため私以外誰も気付かなかったようだ。
「じゃあ、ご飯食べるか」
お父さんはそういって笑った。
そんな楽しい旅行から一瞬間くらい後、悲しい出来事が起こった。
——お父さんが、死んだ。
なんで? あんなに元気だったのに。
楽しそうに笑ってたのに……!
私はその数日後、お父さんの言った意味を知った。
「ねえねえ、花言葉ってしってる?」
という友達の言葉から。きっと私を和ませようとしてくれたんだろう。
「何? それ」
私は友達に聞くと
「これに載ってるんだ。貸してあげる!」
といって私に図鑑を押し付けた。
その子は元々そういう子だったのでそこまで気にせず借りる。
私もいろいろ貸してるし。
家に帰ってそれを開いた。
ふとみんなのネックレスの花の花言葉を調べてみようと思った。
こういうのはただみててもつまらないし。
はじめに目に付いたのは梅。
意味は、独立・厳しい美しさ。
……べつにれいちゃんは厳しくないけどなあ?
どくりつってなんだろう?
次はコスモス。たしかお姉ちゃんのは赤色だったなと思い赤の説明をみる。
意味は調和。
たしかにお姉ちゃんはまわりに溶け込んでいる感じがする。
最後に、私がもらった花。ユリ。
種類ごとにも意味が違うらしいから私のペンダントを注意深くみてみる。
でも分からない。ふと袋をみると「カサブランカ」と書かれていた。
カサブランカの意味は、純潔・無垢。
私は、そんなイメージなのだろうか?
「ねえ、お父さん。お父さんが言っていたのはこういうことなの?」
仏壇の前で訊ねると遺影のなかでお父さんがそうだよと微笑んでくれた気がした。
—END—
あとがき
作中で使われている花言葉ですがいろいろな解釈があります。
調べてみるのも面白いと思いますよ!
あと、いきおいあまって2000字超えてしまいました。
すいません。
なんか当初の予定ではほっこり+感動なはずなのに変になりました……。
次は本編更新します。
追記
誤字がいくつか見つかったので訂正しました。