コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: オカルト研究部には天使がいるっ!合作 イラスト・声有り ( No.44 )
- 日時: 2014/09/21 12:32
- 名前: 夕陽 (ID: KVjZMmLu)
番外編
魔術編〜相川翔太〜
「本当にやるんですか?」
翔太は顔をしかめる。
しかし、目は絶えず本に向いていて何にしようか検討しているようだ。
「当ったり前じゃない。何のために私がきたと思っているの?」
「部活の顧問なんだから来てくれないと困ります」
藤井先生の言葉に翔太は嘆息気味に返した。
「じゃあ、僕はこれをやらせてもらいます」
翔太は選んだページを皆に見せる。そのページには、
遠くの人と話せる
と刻まれていた。
「遠くの人と話せるですか? 電話みたいですね」
奈美が“これが本当に魔法なの?”というような顔をした。
「まあ、ここに載っている限り魔法でしょ? じゃ、相川君よろしく!」
藤井先生は緊張感のかけらもない言葉で後押しした。
「少しの間、魔法の使い方を読ませてください」
翔太がそう断って目を皿のようにして活字を追う。
「では、やってみますね」
あれから数分後。翔太はテーブルをどかして真ん中に立った。
必要なものは画像を映すためのスクリーン。
それは、今皆の目の前にかかっている。
「…………」
翔太は一心に祈っている。
藤井先生が持ってきた本は呪文を唱えるものではなく、祈るようにして発動するようだ。
少しすると何も映っていなかったスクリーンに女の子の顔が映った。
ちょっと気弱そうに見えるたれ目や、大人しそうな下の位置に結んだ二つ縛り以外はあまり特徴のない子だった。
「お久しぶりだね、美穂」
翔太が少し感動したようにして言葉をつむぐ。
「こちらこそ。三年もすると変わるんだね」
美穂と呼ばれた少女は昔を懐かしむ表情をした。
「元気?」
翔太が問う。
「元気だよ。ただ、こっちの世界にいると翔太たちの世界に帰りたいって思っちゃうんだ。ホームシックかな?」
「そっか。ごめんな、僕だけ助かって。美穂や春樹、智也、明莉、花梨、莉奈……皆助けられなかった」
「そんな事ないよ。皆、こっちでも弱音はかないで生きてるよ。誰も翔太を責めてないから。折角会ったんだし、楽しい話しよ? あのね、皆性格少し変わったんだよ」
美穂が楽しそうに言うと翔太もさっきまで暗かった顔が少し明るくなった。
「ありがとう。……ちなみにどういう風に変わったの? 皆の性格」
「私はね、前よりも物怖じしなくなったよ! 皆にも言われるの!!」
「確かに前はおどおどしている感じだったもんな」
「あはは。でね、莉奈ちゃんはね大人っぽくなったよ」
「あの、莉奈がか?」
翔太が驚いて問う。
「うん、あの里奈ちゃんが。で、明莉ちゃんは怖がりなのは相変わらずだけど変なプライドがなくなったの。お嬢様言葉とか結構無理してたみたい」
「そっか。よかったな。お嬢様言葉じゃない明莉か……。想像つかないな」
「他にも皆少しずつ変わったよ。花梨ちゃんはあまり猫をかぶらなくなったし、春樹は勉強頑張ってるし、智也も無口だけど雰囲気が柔らかくなったよ」
美穂は立て続けに報告をする。
「皆、変わったんだな」
翔太は少し寂しそうに呟く。
「うん。……そういえば、すごいお知らせがあるよ!!」
美穂は少し悩んだあとに“すごいお知らせ”の内容を言う。
「あのね……春樹と莉奈ちゃん、付き合ってるんだよ! あと、智也と明莉も後ちょっとでくっつきそうなの!」
その言葉に翔太は少し嬉しそうな顔をした。
「春樹と莉奈は三年前から両思いだもんな。智也と明莉は意外だな」
「そうなの? 気付かなかった。智也と明莉ちゃんは見ていて面白いよ。悪い意味じゃなくてほっこりするの」
「お前、鈍感なのは今も昔も変わらないな」
軽い口調で言って笑う。
「そんな事ないよ! 失礼な」
美穂も同じように笑った。
「あ、もうそろそろ時間かも……」
美穂は少し残念そうに言った。
「時間?」
翔太は首をひねった後気付いた。
これには限度があることに。
タイムリミットは長くて一時間。でも、短ければ一分も持たない。
「そっか……。次会うときは、本物に会いたいな」
翔太の呟きに
「私も」
美穂が答えた。その後美穂は少しずつ薄くなっていき、やがて消えた。
数秒その余韻に浸ってから翔太は藤井先生に言う。
「上手く、できました?」
—To be continued—