コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜未来へ幸せを〜どうかこの夢を終わらせないで ( No.43 )
- 日時: 2014/04/27 17:05
- 名前: みにょ (ID: 3HjnwYLE)
時計の針の音が、やけに響く。機械的な音は、正しく時を刻んでいるのだ。
優葉の部屋は、案外綺麗だった。机の上は、私より全然整頓されている。まぁ、教科書がないからかもしれない。代わりに難しそうな本が数冊並べてあった。
「俺…ずっと黙ってとことがあるんだ。」
「そんなの、全部じゃない。」
「うっ…そうだけど…。」
久々の、バカみたいな会話。それが何処と無く嬉しかった。幸せって、このことだ。きっと。
「でも、もう全部話そっかなって思った。」
「え?」
今朝の発言とは真逆の言動に、私は驚きを露わにする。家族だからって、話さなきゃいけないなんて、間違いだったはずなのに。
優葉は少し俯いて、真っ黒に染まった瞳を閉じた。
せしてもう一度、ゆっくりと開く。
その瞳は、もう迷っていなく、決心した瞳だった。
「千咲の、ことなんだけど。」
チクリ、と小さく心が痛む。
「ずっと話さなきゃって思ってた。」
「いいから話して。」
じれったい。私は思わず冷たい言い方をする。少し焦ったが、優葉は気にしていないようだ。
千咲のことについては、毎日考えていた。
彼女とか、幼馴染とか、色々考えた。
けれど、納得いく答えには辿りつけなかったのだ。モヤモヤは広がるばかりで、苦しかった。しかし私にはその気持ちの理由がわからない。何故モヤモヤするのか、今だにわからない。
ただひたすら、恋愛対象として、二人が想い合うことを恐れた。
「千咲は、俺の姉ちゃんなんだ。」
「…ほへ?」
腑抜けた声は、しばらく耳に残る。姉ちゃん?彼女じゃなくて、
「な、なんだぁ…。」
安心したような、まだまだ安心できないような、不思議な感覚。優葉は?を浮かべつつも続けた。
「この間の男、リーダーって言ってただろ。」
「うん。」
「あれ、千咲のことなんだ。」
「えっ!嘘!」
私はひどく驚く。千咲とリーダーが同一人物だったなんて、いままで考えてもみなかった答えだったからだ。
しかしそうなると千咲は妖で、戦争を止めるために過去の人を殺す人ということになる。
「嘘、だったら苦労しないさ。」
その言葉に、どれだけの思いが詰まっているだろうか。
きっと私は、わからない。
優葉はうつむいたまま、カーペットの毛を握る。その手も、肩も、小さく震えていた。
「千咲は、母さんと父さんが大好きだった。もちろん俺だって、大好きだ。もし、母さんと父さんが帰ってくるなら、俺は何でもやる。」
カーペットに、シミができる。涙を流す優葉は寝ている時しか見た事がなく、私は動揺した。しかし優葉は強引に涙を拭う。
溢れる涙を、必死に拭う。
そしてしっかり、前を向いた。
「けれどそのせいで人が死ぬのは、だめなんだ。きっとその人にも、大切な誰かがいるから…。
大切な誰かは、悲しい気持ちになるから…!
その気持ちを、俺は知っちゃったからっ…!
だからそんなの、
絶対だめなんだよ!」