コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 短・中編集(参照2300突破感謝!) ( No.116 )
日時: 2016/12/03 16:53
名前: 夕陽 (ID: tCwHjG.M)

Truth is stranger than fiction.(事実は小説より奇なり)

「ねえ、この話知ってる?」
「え? なんの話?」

 休み時間が始まるとすぐに私の席に寄ってきて話し始める成美。
 考え事をしている最中なので驚いた。
 いったいどんな用件だろう?
 休み時間終わってからすぐに話しかけたってことは相当急なものかな……。

「あのね、音楽室の肖像画が一つ動くんだって。しかもね、——」
「次理科室に移動なので早めに準備してください」

 学級委員長の言葉でその言葉はさえぎられた。
 何の話だろう、気になる……。

「あ、やばい。まだ支度してなかった。また後で」

 成美は慌てて自分の席に戻った。
 私もすぐに話しかけられたから準備はしてない。
 急いで教科書とノート、下敷き、筆記用具をもって教室を出た。
 そこからは走らない程度に全力で歩いていたので話している暇はなかった。
 ……理科室が別館にあるのをこれほど恨んだことはない。

     *     *     *

 結局昼休みまで成美の話を聞くことはできなかった。
 体育とか係の仕事でそれどころではなかったのだ。

「で、続きなんだけど」
「うん」
「肖像画がね悩み相談をするんだって! 謎でしょ?」

 確かに謎だ。
 動くだけならまだしも、悩み相談なんて。

「確かに謎だね」
「でね、今日の放課後調べようと思っているんだ。青葉も一緒にどう?」
「行く!」

 私は二つ返事で答える。
 実はミステリーを読むことや見ることは私の一番の楽しみだったりする。
 本は今まで児童書を読んでいたが、図書室や図書館にあるのはほぼ読みつくしてしまったので児童書以外を6年生になった今年から読んでいる。

「じゃあ、放課後帰りの会が終わってからね」
「分かった!」

 そこから私は先ほどまでのことではなく、放課後のことで頭がいっぱいになった。

     *     *     *

「よし、行くよ!」

 そういう成美の手には音楽室の鍵。
 先生と仲がいいらしく簡単に入手できたとのこと。
 すごい行動力だ。

「本当に動くかなあ……」

 私は心配になった。
 そんなの、子供だましかもしれないし。

「動くよ! だって体験した子が何人もいるんだもん!」

 私とは対照的にすごい自信。
 まあ、体験者がいるなら全くのデマというわけでもないだろう。

「じゃあ開けるよ」

 鍵を差し込み回す。
 これでロックは外れた。
 あとは防音された扉を開けるだけ。
 成美が一瞬ためらってから一息に扉を開けた。
 扉は抵抗もなくすっと開く。
 ここまでで変化はない。

 二人で中に入ってみる。
 まだ、日は傾いていないので電気はつける必要はないだろう。
 扉を閉めるとなんだか空気が濃くなった気がした。
 霊感があるわけじゃないから分からないけど……。
 でも不思議と怖い感じはしない。
 どちらかというと私たちを守ってくれるバリアを張ってくれた感じだろうか。

「変化、ないみたい」

 成美は肖像画を見て残念そうに言う。
 私も肖像画を見ているが確かに動きそうな気配はない。

「もしかしたら、条件があるとか?」

 私はふと思って言う。

「そうかもね。明日体験した子に詳しく聞いてからまた来よう」

 そう言って扉を開けようとしたとき、

「そこの小娘ども。我輩になんか用かね?」

 声をかけられた。
 肖像画を見てみると明らかにこの学校にあるはずがない肖像画が私たちの前にいた。

「う、浮いてる……」

 成美は肖像画を見て呟く。
 そう、私たちの目線と同じ高さなのだ。
 肖像画が大きいわけではなく浮いているのだ。

「肖像画が浮いていたら変か?」

 変です、って言おうと思ったが言ったら怒られそうなので飲み込む。
 隣で成美も複雑そうな顔をしていた。

「まあいい。なんかここに来るということは悩みでもあるのではないか?」

 なんかこの人(?)意外と優しい。
 雰囲気がすごく優しいおじいちゃんを彷彿とさせる。
 でも、私は好奇心でここに来ただけで特に悩みなどない。

「いえ、ただもし知っていたら教えてほしいことがあるのですが」
「なんだね?」
「七不思議、この学校にありますか?」
「もちろんあるとも。我輩を筆頭にな」
「それを教えてください!」
「それは無理だ。いくら何でも興味本位で人間にうろつかれたら嫌な気分になるやつもいるんだ。我輩は平気だが」

 幽霊や妖怪にも個人差はあるんだなあ。
 なんか不思議な気持ちだ。

「じゃあ、肖像画さんみたいに人間と話すのが好きな人だけでいいです!」
「いることにはいるが、お前達を不幸にするやつだぞ?」

 幽霊や妖怪はいい人ほど引っ込み思案なのだろうか?
 でもこの肖像画は人間と関わるの好きらしいが悪い感じはしない。

「……。そうですか。教えてくださりありがとうございます」

 少し残念そうに成美はお礼を言った。

「そっちの小娘は?」

 肖像画は私のほうを見て言う。

「私は特にないです」

 肖像画の人は少し私の目を見てこう言った。

「本当のことはちゃんと伝えなきゃダメだぞ」

 すこし驚いた。
 いや、かなり驚いた。
 隣で成美が不思議そうな顔をしている気がする。

「はい」

 なんだか本当に不思議な人だ。

『ありがとうございました』

 私たちはそう言って音楽室を出た。

     *     *     *

 職員室で鍵を返して下校中。
 肖像画の人の言葉が頭をよぎる。

「あのね、成美」

 私はその言葉に背中を押されて今日半日、そしてそのことを知った時から悩んでいた言葉を告げる。

「私ね、転校するんだ。中学は別のところに行くの」

 成美は立ち止った。
 私もつられて立ち止まる。

「そうなの……? 嘘じゃないよね?」
「うん、今年の3月でこの町とはお別れ。だから離任式も出れない」
「どこに行くの?」

 私はこの町から電車で一時間の場所を告げた。

「そっか。そうなんだ……」

 下を向いて呟く成美。
 やっぱり黙っていたのは悪かったのかもしれない。
 怒らせちゃったかな……。

「でも、そこなら電車でも行けるし夏休みとかまた会おう! ね?」

 しかし続けられたのは意外な言葉。
 怒ってなどいなかった。
 ああ、こんなことならもっと早く言えばよかった。

「じゃあ残り2か月だけどたっくさん遊ぼうね。もちろん引っ越してからの夏休みとか冬休みとか春休みとかも!」
「うん!」

 私は今までで一番楽しそうに笑っていただろう。

     *     *     *
あとがき
お久しぶりです。
なんか毎回題名と内容が合っていない気がします。
気がするだけだと思いたいです……。

次の更新は冬休み入ってから新学期に入るまでのどこかだと思います。
ネタが思いつけば早くなるかもしれません。