コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 短・中編集 ( No.13 )
日時: 2014/04/18 23:20
名前: 夕陽 (ID: aUfirgH8)

三題噺「夕陽」「タンス」「人工のカエル」 ジャンル「ギャグコメ」
(三題噺のお題メーカーから)

「よし、しりとりしようぜ!」
 僕はその提案にため息をつく。
「しりとりって子供じゃないんだから……」
「いや、俺らはまだ子供だろう。まだ小六だぞ?」
 樹が僕の肩を揺らして猛抗議してくる。……あ、樹って言うのが僕が今話している相手だ。
「お前も冷めてるな」
「お褒めいただきありがとう」
「褒めてないし。雄吾ももう少し熱くなれよ! 夕陽に向かって走り出そうよ!!」
「今普通に昼だから夕陽ないし。それにそっちは窓だから落ちるぞ」
「大丈夫だ! 俺に不可能はない!!」
 本気で飛び降りそうなので襟首をつかみとめる。
 ……まあ、ここは一階だからたとえ飛び降りても運動音痴じゃない限り怪我はしなそうだけど。
「俺がここから飛び降りるか、俺としりとりするか選んでくれ!」
 究極の選択のように重々しく言う。それに対し僕は
「樹がここから飛び降りる」
「即答!?」
「だってまたいだらすぐ地面だし。着地失敗するやつなんかいないだろうし」
 僕の身長なら余裕でまたげる。
「雄吾は背が高いからそんなことが言えるんだ! 俺の身長を考えてみろ!」
 僕は樹の身長でここをまたぐ想像をしてみる。身長120cmの樹には難しそうだ。
「ごめん……。そこまで気付かなかったよ」
「だから俺がここから飛び降りる事は死に等しいんだ」
「それは違うと思う」
 さすがにここから出ても大丈夫だと思う。
 だって下、ふかふかの土だし。
「そんな……。見損なったぞ!」
「見損なったって……。じゃあ、僕がやってみようか?」
「そうしたら俺がやらなきゃいけなくなるじゃないか!」
流石に気付いたか……。
「何その“ちっ、せっかく面白い事が起こりそうなのに”みたいな顔」
「別にそんな事思ってないよ。ただ、これをネタにしてからかおうと思っただけだよ」
「大体あってるじゃん!」
 うるさいなあ。
「じゃあ、しりとりしよう」
「接続詞がぜんぜん違うと思う」
「しりとりの”あ”からな」
 僕の知っているしりとりは“あ”の字はひとつもなかったと思う。
「アヘン」
「一発で終わった!」
 スルーして一発で終わらせる。
「そんなことしていると、地震が起きたときタンスにはさまれそうになるけどたまたまよけて生き残る事になるぞ!」
「それは、いいことだと思う」
「だったらある時魔法が使えるようになってしりとりしなきゃいけなくなるぞ」
 ……なんで魔法が使えたらしりとりしなくちゃいけないんだろうか?
「じゃあ僕は魔法が使えないからしりとりしないね」
 適当にあしらってその場を離れた。

 次の日、いつも通り教室に行くと
「おはよう! しりとりしよ——」
「おはよう。今日は忙しいなあ」
「何で無視するんだよ!」
 しりとりを諦め切れない樹が絡んできた。正直めんどくさい。
「だってしりとり疲れたし」
「アヘンしか言ってないじゃないか!!」
「樹は何も言ってないからいいじゃないか」
 地団駄を踏む樹を尻目に僕は勉強を始めた。
 塾の宿題やってなかったのでそれをやる。今日塾だし。
「じゃあ、メカごっこするぞ!」
「子供っぽすぎ」
 僕はため息をつくが気にせず樹は言った。
「俺、人工ガエル・ケロ」
 樹が口にしたのは、あるカードゲームのカードの名前だった。
「で、雄吾が天然ボケ・テンネ」
 こいつ、殴ってもいいかな?
「雄吾……顔が怖いよ?」
 恐る恐る指摘する樹に
「だったら悪口言うな」
 と笑顔で対応した。
「笑顔が逆に怖い……」
 と樹が震えていたがいったい何の事だろう?
「好きなのでいいぞ。雄吾は何がいいんだ?」
 しかし樹はどんな事でもすぐ忘れるタイプなので何事もなかったように聞いてくる。
「僕はやらないよ。他の子とやってくれ」
「いいだろ? 少しぐらい」
「嫌だ」
「いいだろ?」
「嫌だ」
「いいだろ?」
「い・や・だ」
「そんなに?」
「そんなに」
 しつこいなあ。
「だって俺、雄吾ともっと遊びたいんだもん!」
 その言葉に少し動揺している自分に驚いてしまう。
「なんでだ? お前にはたくさん友達がいるだろ?」
 “には”の部分を強調して言う。
「でも、雄吾と遊びたいんだよ。雄吾と遊ぶの楽しいし」
 なんでもないことのように笑顔で言う樹。
 まあ、たまにはこうやって遊ぶのも悪くないか。
「じゃあ、一日だけだぞ?」
 念を押して遊ぶ内容を考える。
 考える振りをしながら僕は思っていた。
「うん。これで塾ばっかな毎日の息抜きになるな!」
 こいつは本当にいいやつだ。
 毎日塾で忙しい僕の心配をしてくれるから。
「ありがとう」
 つぶやいた言葉は、樹に届いただろうか?