コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 意味不明な短・中編集 ( No.15 )
- 日時: 2014/04/22 23:02
- 名前: 夕陽 (ID: atf90J33)
捨てられた少年とロボット
「お前は出来損ないだ」
「君はこんな事も分からないの? バカだね」
「お兄ちゃんを見習いなさい」
何度も言われてきた言葉。
何度も繰り返された言葉。
それらが僕の頭の中でぐるぐると回る。
あるとき僕は思った。
——もう、こんな所に居たくないっ。別の場所へ行きたいんだ!
善は急げというように僕は急いで支度をした。家族はそれに気付いたけど誰も止めなかった。むしろいなくなって清々するというような顔つきだ。
ただ、僕の唯一の家族といってでも過言ではない犬のモグは寂しそうに僕の衣服に鼻を擦り付けた。
「ごめんね。こんな所に置いてきぼりにしちゃって」
僕はモグに最後の挨拶をするとそっと家を出た。
- Re: 短・中編集(リク受付中) ( No.16 )
- 日時: 2014/04/22 23:25
- 名前: 夕陽 (ID: atf90J33)
捨てられた少年とロボット2
私は、天才でした。
人間と同レベルの脳を持ち、運動神経も一般人を上回るほど。
私は何でも出来ました。
研究者に作られてから出来ない事など存在しませんでした。
ただ単に研究者の腕が良かっただけかもしれません。
でも、私はすばらしいロボットでした。感情も言語も全て人間と同じでしたから。
ただ、ある日失敗をしたから、一番大事な任務を失敗したから、私は研究者に見捨てられました。
そのときの研究者の目も言葉も表情だって1年経った今でも鮮明に思い出せます。
「お前は、もういらない」
成功していたときは全く見せなかった鋭い視線と吐き捨てるような言葉。
私ははじめ混乱していました。
だって私は
——人が操作していないと動きませんから。
私は私の弱点を知ってしまいました。
今まで当然のようにスムーズに動いていたのに動かす人がいなくなると足を引きずるように歩くようになりました。
普通に人間のような容姿と常識があった世界はあっという間に崩れ去りました。
しかし、あるときそんな私の前に救世主が現れました。
その子は長年風雨にさらされて痛んだ私を直そうと努力してくれました。その子のおかげで私は“自分の意識で生きられる”ロボットになりました。
私はその子に聞きました。
「あなたは何で私を助けてくれたんですか?」
その子はこう言ってくれました。
「君も僕の仲間みたいだから」
悲しそうに微笑みながら。
その表情は研究者の面影があるような気がして胸が痛みました。
- Re: 短・中編集(リク受付中) ( No.17 )
- 日時: 2014/04/26 19:40
- 名前: 夕陽 (ID: atf90J33)
捨てられた少年とロボット3
僕は、ふらふらと歩いた。当てもなく、さまよい続けた。
もう、そろそろ死んじゃうかな……。
意識が朦朧としてくる時、見えたものがあった。
人、だろうか?
でも少し違う気がする……。はっきりとはいえないけど。
僕は足を引きずるようにしてその人に近づく。
「こんにちは」
僕は彼女に声をかける。彼女がこちらに振り向いた時、僕はさっきの違和感が確信に変わった。
彼女の瞳は人工物のようだった。
手も足も顔も。
全て全て、自然ではなかった。
風雨にさらされていたからか、少しさびらしきものが浮かんでいた。
多分、機械だ。しかも壊れている。
「直したいな」
僕のお兄ちゃんは故障したロボットを直すのがすごく上手かった。
九歳という年の差があったがとても仲が良かった。
お兄ちゃんは頭が良かったから上手かったんだろうな……。
僕も直してみようかな。
お兄ちゃんみたいに上手くできなくても。
「直して……くれますか?」
蚊の鳴くような小さな声で彼女は聞いた。どうやらまだ完璧に故障はしていないらしい。
これなら、僕も直せるかも。
僕は、いろいろ詰め込んだリュックを開けて工具箱を取り出す。
「いまから直してあげるからね」
そっと笑って彼女の壊れかけた体を見た。
- Re: 短・中編集(リク受付中) ( No.18 )
- 日時: 2014/04/26 20:11
- 名前: 夕陽 (ID: atf90J33)
捨てられた少年とロボット3
「直してくれてありがとうございました」
多少動作がおかしい所もあるが、とりあえず動くようにはなった。
「まだ完璧じゃないから途中で止まるかもしれないし、後で道具がそろったら完璧に直すね」
「いいです。これで十分です。ありがとうございました」
淡々と彼女が言う。
「でも、そんなわけには……」
お兄ちゃんは昔から言っていた。“直すんだったら中途半端じゃダメだ。完璧にしろ”って。
「ダメかな?」
彼女は目を伏せるとしばらく考え込んだ。
「……やっぱり、無理です」
うつむいたまま、答えた。
「何で?」
「私に、幸せになる権利は、ないからです」
顔を上げて僕をまっすぐ見て答えた。その顔は涙なんて出ないはずなのに泣いているように見えた。
「どういうこと? ロボットが幸せになっちゃいけないの!?」
声を荒げてしまった。でも、まだ子供な僕にはこうするしか感情のぶつけ方が分からなかったんだ。
「違います……。私は、できそこないだから幸せになってはいけないんです」
“できそこない”
僕が小学生になってからずっと言われてきた嫌いな言葉。
その言葉を彼女から聞いたとき、僕は何か変な気持ちになった。
仲間が出来て嬉しいと思う喜び、彼女の口から出るこの言葉に対する嫌悪。さまざまな感情が渦巻く。
「それ、誰かに言われたの? 誰かに、比較されて言われたの?」
僕の口から出たのは、純粋な疑問。
「言われた事は、ないです。でもそれに近い事を言われました。一番尊敬していた人に」
彼女はためらいつつも答えた。
僕はその答えにショックを受ける。
そんな答え返ってくるなら、何回も言われた事あるって言ってくれた方が何十倍もましだった……!
「そんな……。一体何があったの? 君が今ここにいることと関係あるよね?」
僕には一つの推論が組み立てられていた。
追い出された彼女。
そのままここに彷徨って倒れる。
そして僕に会う。
大体こんな感じだろう。
僕は彼女の返事を待つ。
「それは、言えません。ただ、ここに来たのは偶然ではないと思います」
どういう意味だかよく分からない。
続く彼女の台詞に僕は衝撃を受けた。
「あなたは、青木 海斗を知っていますよね?」
青木海斗。それは、僕の兄の名だった。
- Re: 短・中編集(リク受付中) ( No.19 )
- 日時: 2014/04/28 09:06
- 名前: 夕陽 (ID: atf90J33)
捨てられた少年とロボット4
「知っているけど……なんで君が知っているの?」
僕は混乱気味に問う。
「私を作ってくれた方だからです」
確かにお兄ちゃんは研究所に勤めていた。
けれど、ロボットを作っていたなんて聞いていない。
「不思議そうな顔をしてますね。でも、あなたが知らないのは当たり前です。あなたは、研究者が研究所に働き始めてから会っていないでしょう?」
……確かにそうだ。
僕は、お兄ちゃんに会っていない。
比べられるのが嫌だから。
お兄ちゃんに比べられるのがつらいから……。
僕は、逃げた。
お兄ちゃんという存在から。
今はどこにいるかさえも知らない。
「私は、あなたの話をいつも聞いてました。“弟はバカだけどいいやつだ”って言っていました。あなたの話をする時はいつも楽しそうでした」
お兄ちゃん、そういう風に思ってくれたのか……。
「あなたの事は、失敗談でも楽しそうに話してくれました。……私は、失敗したらすごく怒られたのに」
少し悲しそうな瞳で僕を見る。
「……一体何があったの?」
聞いたら引き返せないような気がしたけど、聞いてしまった。
「簡単な話ですよ。ある指令に失敗してしまったのです。今まで成功しかしてこなかった私はそのことに深く悲しみました。そこで言われたんです。あなたのお兄さんに。“お前は、もういらない”って」
“お前は、もういらない”
その言葉が僕の頭に直接響く。
そんなこと、言わないでよ!
そんな怖い言葉、言わないでよ!!
混乱して言葉が出てこない。
その間もロボットの彼女は続ける。
「だから、こっそり出てきました。研究者はとても頭が良かったです。だからすぐに私の代わりを作り出すでしょう」
……そんな悲しいこと、言わないで。
「ロボットはすぐに代わりを作れます。人間とは、違うんです」
お願いだから……。
そんな願いも通じず、彼女は思いを淡々と吐き出す。
「人間はいいですよね。代わりなんてすぐに作れないんですから。私も次生まれ変わるなら人間になりた——」
「そんなこと言うなよ! そんなに、研究者のところに戻りたいなら戻れよ!!」
卑屈な言葉を聞いていたくなくて、大声でさえぎった。
……戻りたいんだったら、僕が連れて行くのに。
「私が研究者の下に戻っても何も起こりません。私の代わりのロボットが働いているのを見ることしかできません」
「いいよ、僕も一緒に行く!
僕は、彼女の手をとり駆け出した。
前教えてもらった場所を思い出しながら。
「ここ?」
僕は彼女に聞くが返事はない。
彼女は何も考えてないようだ。
でも、確かにお兄ちゃんの研究所だと思う。だって研究所の名前が“青木海斗研究室”だったから。
「こんにちは!」
僕はためらいもなくその研究室のドアをたたいた。
どうやら、誰もいないのか……と思って帰ろうとした頃、頑丈そうな木の扉が開いた。
「ローじゃないか! 心配したんだぞ?」
髪の毛は跳ねていて、白衣は少し汚れている二十歳くらいの人が出てきた。
僕のお兄ちゃんだ。二年ぶりくらいだから少し変わっているが面影は残っている。
「あれ? もしかして、陸斗?」
お兄ちゃんは僕に気付き駆け寄ってくる。
「久しぶりだなー。最後にあったのは二年前だったからもう小学六年生か。早いなー。中に入る? 汚いけど」
マシンガンのようにしゃべって僕達を家の中に入れる。
中は確かに散らかっていたがそれは研究室だけで、食卓は普通にきれいだった。
「紅茶飲めるか?」
僕に対して尋ねるお兄ちゃんに
「砂糖を入れれば」
と答えた。内心そわそわしていたので、視線がぶつかる事は一度もなかった。
それにしてもどうしよう。
勢いでつれてきちゃったけど、僕の問題じゃないし……。
もう帰ろうかな?
そう思い席を立つと彼女(ローって名前らしい)に
「帰るんですか? 私をここにおきっぱなしにするんですか?」
と寂しそうに言われた。でも、正直居心地が悪い。
「ごめん、僕もう帰るよ」
その時
「できたぞ〜。陸斗には砂糖たっぷりだ! ……あれ? お前もう帰るのか?」
お兄ちゃんが来てしまった。
しかたなく席に着くと紅茶をすする。
あまり、味がしない。
「ロー、勝手に家でちゃだめじゃないか。すっごい心配したんだぞ?」
とりあえず、ぼんやり二人のやり取りを見ていることにする。
「でも、研究者は言っていたじゃないですか。“お前はもういらない”って」
「あー、その事か。確かにそう言ったかもしれないけど、お前に対してじゃないぞ?」
「え? でも私以外誰もいませんでしたし……」
少々困惑気味のロー。
僕も少し驚く。確かにお兄ちゃんがそんなひどいこと言うはずはないって思っていたけど……。
「それはな、実験だ。実は超小型携帯電話を発明したんで少し試してみたんだ。このまましゃべっていても違和感はないかをな」
お兄ちゃんいわく、そのときは発明品を試してみたくなりローの前でわざとあんな言葉を言ったらしい。
携帯電話があると思えば、この言葉を電話相手に言っているであろうとローが思うと思ったらしいのだ。
よく分からないが、これは解決したらしい。
「じゃあ、私の思い違い……?」
「そうだな。まあ、こっちが悪いけどな。心配かけてごめんな」
解決したようだし、僕も帰るか。
僕は静かにこの部屋を出ようとした。
「おい、待てよ」
しかし気付いたらしいお兄ちゃんは僕を呼び止める。
「もう帰るね。紅茶ありがとう」
僕はそのまま家を出ようとした。
「だから待てよ!」
お兄ちゃんは僕の服のフードを引っ張る。
「親父とおふくろ、心配してたから早く帰れよ」
何を言っているんだ、お兄ちゃんは。
家に帰れ?
そんなの、地獄に行けって言っているのと同じじゃないか。
「嫌だ。絶対に嫌だ」
僕はどこかにいって、あの家族の見えないところにいってそして死ぬ。
あそこで生かされるくらいなら、死んだほうがましだ。
「なんでだ? お前の事すごく心配してたぞ?」
そんなわけない!
あんなに僕の心を言葉で切り裂いていったのに……!
「あのな、陸斗は嫌われているって思っているかもしれないけど、実は逆だぞ? たまにここにくる時親父もおふくろもお前の話は必ずするんだ。“陸斗もがんばれば海斗と同じ位はできるのに”って。だから必要以上に言い過ぎてしまうとも言ってたよ」
嘘だ。そんなはずはない。
「その証拠にお前、叱られたことはあっても、暴力振るわれた事はないだろ?」
……確かにそうだ。何度も嫌な事は言われたが、何があっても手はあげなかった。
「帰ってやれよ。はじめはすぐ帰ってくるだろうって思って何も言わなかったらしいけどな。あまりに遅いもんで俺のところに電話してきたんだよ。他にもお前の友達何人かな」
帰って……みようかな?
僕はそう思い研究所を後にした。
—END—
あとがき
昨日投稿しようとしたのに、出来なくてすいません……。
なので結構多めに書きました!
ちょっとシリアス多い気がしたので少しシリアスから抜け出そうとして失敗しました……。
もしかしたら、新しい小説書き始めるかもしれないのでそうしたら更新遅くなるかも……。