コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 短・中編集(参照300突破感謝!) ( No.57 )
- 日時: 2014/08/07 00:15
- 名前: 夕陽 (ID: KVjZMmLu)
ことわざ『雨降って地固まる』
「もう、杏奈のことなんか知らない!」
「私だって美香なんかと絶好だしっ!」
そう言い合って美香と別れたのが昨日。
私は深い後悔の底にいる気分だ。
なんで、あんなくだらないことでけんかしてしまったのだろう?
私はけんかの原因であるストラップを見つめる。
ビーズで美香が一生懸命つくったであろうストラップ。
先日の誕生日にもらったものだ。
しかし昨日、壊してしまった。
大切にしてたのに。
嫌な事があったとき、いつも握り締めていたのに。
昨日もいやなことがあった。
それで強く握り締めてしまった。その結果、
——糸が切れてビーズが飛び散ってしまった。
いつも強く握り締めすぎた反動だろうか。いともたやすくそれは崩れ去った。
崩れ去ったのはそれだけではない。
その事を知った美香との友情も、だ。
どうやら美香は私がわざと壊したと思っているらしい。
本当は違うのに……。
朝、学校に行った私はすぐに美香に謝ろうと思った。
わざではないが、壊した事は本当だ。
「あの、美香」
「…………」
しかし、私が声をかけると美香は席を立って他の人のところにいってしまった。
そのことに私は呆然とする。
今まで一度もこんなことなんてなかったのに……。
私はストラップを握り締めて心を癒そうとポケットを探る。
しかし、壊れてしまったストラップは何の癒しにもならなかった。
むしろ壊れてしまった私と美香をあらわすようで余計に心が痛い。
私はゴミ箱に捨てようとした。
しかし、その動作は途中で止まる。
——もし、このストラップが直ったら、仲直りできるかもしれない……。
そんなのばかげた妄想かもしれない。
でも私はその妄想にかけてみようと思った。
その日から私は少しずつストラップを直していった。
5日後、完璧とはいえない不恰好なストラップが出来上がった。
やっぱり私、不器用だな……と感じつつもこれで仲直りできるかもしれないという喜びでそんなのどうでもよくなった。
私はそのストラップを持って美香のところにいった。
「美香、この前はごめん」
逃げられないうちに謝る。続けて
「壊したの、わざとじゃないの! 直そうと思ったけどこんな風になっちゃった」
私は5日間かけて直したばかりのストラップをポケットから取り出す。
「…………」
美香はストラップを無言で見つめる。
「……ない」
美香が発した言葉は小さくあまり聞こえない。
「何か言った?」
私は不安になり訊ねる。
許さないだったらどうしよう?
「バカじゃない?」
もう一度言った言葉は本気というわけではなく、冗談交じりの言葉だった。
「本当はわざと壊したわけではないの、知ってた。いつもすぐに物壊しちゃう子だし。でも、あれがんばって作ったものだから。壊されるの許せなかった。ごめんね、大切にしてくれてたのに」
「いいよ。美香と仲直りできたから。それに美香、これがんばって作ってくれたんだよね? 壊しちゃってごめんね」
泣いて謝る。
「いいよ。今度一緒に作ろう?」
そう言って彼女は笑った。
とても暖かい笑みだった。
『雨降って地固まる』
意味:いざこざが起こった後、物事がかえってよくなること。
—END—