コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 短・中編集(参照400突破感謝!) ( No.65 )
日時: 2014/09/11 22:44
名前: 夕陽 (ID: KVjZMmLu)

二次元に行きたい少女、三次元に行きたい少年

「二次元に、行きたいっ!」

 これが私、木下愛花の心からの願いだ。
 現実が辛かったからか小学4年の時から本を読み「私もこの世界に入れたらな〜」と空想に浸って早5年。
 完璧に二次元が好きな人間になってしまった。

「口を開くと愛花はすぐに二次元の話をするね」

 というのが友達の口癖。
 そこまで二次元のことをあまり口にしないけど。

 まあとにかく私は二次元に行きたいのだ。
 楽しい三次元ではありえないような世界に。

 そしてそのチャンスはある日突然訪れた。

「僕と代わってくれませんか?」

 夜寝る前、ふとそんな声が聞こえた。
 周りを見回しても誰もいない。
 まあドアに鍵かけてあるしいたら怖いが。

「僕はあなたの持っていたマンガの世界にいる桐原悠斗です。もしよければ僕の世界とあなたの世界代わって頂けませんか?」

——桐原悠斗。

 たしか彼は学園ラブコメに出てくる脇役だ。
 彼が通う学園はとても面白いイベント満載でとても楽しいのでもしあったら通うのに……と思うくらいいい学園だ。

 そんなにいい役とかわれるなんて!
 私はそう思いこう言った。

「もちろんいいよ!」

Re: 短・中編集(参照400突破感謝!) ( No.66 )
日時: 2014/09/15 13:22
名前: 夕陽 (ID: KVjZMmLu)

二次元に行きたい少女、三次元に行きたい少年2

「本当にいいんですか!?」

 声だけでも弾んでいるとわかる口調。
 でもなんで三次元に来たいと思ったんだろう?
 その思いを読み取ったように彼は言った。

「だって三次元って楽しそうですから! みんな立体なんでしょう?」

 確かにそうだ。
 でも二次元も立体的に見えるではないか。

「そうですけど……。本物の立体を見てみたいんです!」

 なるほど。
 私も二次元の世界行きたいしちょうどいいか。

「じゃあかわろう? でもどうやればいいの?」

 問題はそこだ。
 あまり痛くないやつがいい。

「簡単ですよ。痛くもありませんから」

 そう言うと私の体が光りだす。
 正確に言えば私の体の周りが光っただけだが。
 その光に包まれて私は意識を失った……。

Re: 短・中編集(参照400突破感謝!) ( No.67 )
日時: 2014/09/21 00:41
名前: 夕陽 (ID: KVjZMmLu)

二次元に行きたい少女、三次元に行きたい少年3

 目が覚めたのはとても綺麗な学校の中だった。

「ここが、本当のダイヤ学園か!」

 そこは絵で見たことがあるダイヤ学園だ。
 どこからどう見ても。
 私が待ち望んでいた、トリップができた!

「いやっほぅ!」

 このことに私はついつい叫んでしまう。
 これでいやな現実から目を背けられる。
 ……なんか悲しい事考えてないか、自分。

 まあそれはおいといて。
 折角来たんだし楽しむか。

 私はそう思い校舎内を歩く。
 すると……。

 あ、主人公の西村雷だ!
 この小説である主人公の姿を見つけた。
 彼は普通の人間だがいい奴だ。
 優しいからか2人の美少女に好かれているし。
 とりあえず声かけてみようっと。

「あの、雷?」

 今の私は桐原悠斗だ。確か悠斗は彼をこんな風に呼んでいたはず。

「ああ、どうしたんだ? 悠斗」

 どうやら間違ってなかったようで何の不思議もなく聞いてくる。
 少しほっとしつつ

「ちょっと道迷って」

 と苦笑いする。
 何度も読んでいたけど地図完璧に覚えてないし。

「確かに広いもんな。で、どこ行くんだ?」
「図書室」

 流石に自分のクラスというと不審がられそうなので別の場所を答える。

「そっか。こっちだぞ」

 微笑んで案内してくれる。
 やっぱり持つべきものは親切な友達だ。
 ……まあ私の友達じゃないけどね。

「ここか……」

 着いたのは広い本がたくさんある部屋。
 まあ図書室だから当たり前だけど図書館といってもいいんじゃないかってくらい広い。
 というか別館一階丸ごと図書室だ。

「あれ? 雷と悠斗じゃん」
「……こんなところで何してるの?」

 図書室にいた美少女二人に声をかけられる。
 この二人がさっき言っていたらいのことが好きな美少女達。

 はじめに声をかけてきたのが安藤瑠璃。元気さをアピールするポニーテールが特徴だ。しかも見た目の通り運動神経抜群。

 二人目は綿貫茜。黒髪ショートカットで雪のように白い肌を持つ女の子。正確は少し内気だ。

「ちょっと案内しててな」
「ありがとよ」

 私はそう彼にお礼を言う。

「いえいえ。友達が困っていたら助けるのが当たり前だろ?」

 そう言ってニカッと笑う彼に私はすごく感謝した。
 やっぱりこいつはいい奴だ。

Re: 短・中編集(参照400突破感謝!) ( No.68 )
日時: 2014/09/23 15:39
名前: 夕陽 (ID: sZhLiFR9)

悠斗目線です。

二次元に行きたい少女、三次元に行きたい少年4

「愛花、起きなさい! 学校遅刻するわよ」

 僕はその声に目を開ける。
 あれ? 僕は桐原悠斗で愛花っていう名前じゃないんだけどな〜。
 ぼんやりした頭で考えたあと

 あ、そういえば入れ替わっていたんだっけ。愛花って人と。

 という事実に気づく。
 あの子あっちの世界でうまくやってるかな?
 なんか意味わからない人に「愛花という少女と入れ替わってくれ!」って言われたから引き受けたけど。それに3次元に興味もあったし。

 階段を下りてなんとなく勘で家の中を歩くとリビングには愛花のお母さんらしき人がいた。

——お母さんがいるなんて!

 僕の家にはお母さんはいない。
 僕はひとり暮らしだし両親は外国に出張中だからだ。
 久しぶりに自分以外の人が作ってくれたご飯を食べ僕は上機嫌になった。

「いってきます!」

 晴れやかに言うと愛花のお母さんは

「今日は素直に出かけるわね。いつもそうだとお母さんも助かるわ」

 と意味深なことを言った。
 いつも学校行くの嫌がってるのか?
 あんなに楽しいところなのに。

 しかし僕は彼女のことをよく知らなかった。

 彼女がクラスの人から無視されていることを知らなかった。

Re: 短・中編集(参照400突破感謝!) ( No.69 )
日時: 2014/09/28 00:46
名前: 夕陽 (ID: sZhLiFR9)

またまた悠斗目線

二次元に行きたい少女、三次元に行きたい少年5

 学校に着くとなぜか嫌な予感がした。

「おはよう」

 教室に入ってすぐ近くの女子に声をかける。
 流石に男子に声をかけるのは不自然だろうし。

「…………」

 しかしそれに対してその女子は何も反応しない。
 そして無言で彼女の友達らしき所へ行ってしまう。

「おはよう」

 次はまた別の女子のグループに挨拶する。

「それでねー」

 しかし彼女は友達と話したままこちらを向こうとしない。

 どうやら愛花はクラスの人に無視されているらしいということがクラスの全員の女子に声をかけてわかった。

 しかしなぜそんなに嫌われているのだろうか。
 容姿は普通……というか普通より充分よかったはずだ。
 伸ばしっぱなしの前髪の中の目はとても大きくて純粋だし、髪の毛もおさげにしているがポニーテールにしたら明るい印象になりそうだし。

 やっぱり暗そうに見えるからかな……。

 そんなことを考えつつ一日目は終わった。

     *     *     *

 よし、髪の毛を切ろう。

 と思ったのはその次の日のことだ。
 一日過ごしてすごい邪魔だったし今日がちょうど休みだったからだ。

 というわけで今美容院にいる。

「今日はどういうカットにしますか?」

 美容院の人に聞かれ俺は

「前髪を切ってください。あと後ろも少しすいてほしいです」

 と要望を述べる。
 これできっと彼女は無視されることはなくなるだろう。

     *     *     *

 次の日、

「おはよう!」

 昨日のように声をかける。
 すると……

「……お、はよ」

 ぎこちないながらもしっかり挨拶は返ってきた。
 やっぱり暗そうだったのが原因だったのか。
 しかしこうなるといい気分だ。
 挨拶されて不機嫌になる人はいないと思う。

 そして俺は次々に声をかける。
 少し戸惑った表情をしていたが皆返してくれた。

 じゃあ今から本当の三次元ライフ楽しむか。