コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 短・中編集 ( No.7 )
日時: 2014/04/10 20:11
名前: 夕陽 (ID: ofW4Vptq)

演技をしている女の子と男の子2

「何でそんな仮面かぶってるの?」
 僕は同じ言葉を二回繰り返す。
 さすがに二回いえば分かるだろう。
「うん? なんのこと?」
 しかし委員長はさっきまでと同じ表情で言い切る。そこには少しの動揺もない。
「委員長……真由美、僕の目を見て」
 僕は無理やり目を合わせると、同じ質問をする。不意に名前を言われた事も手伝ってかさっきの仮面がひび割れた気がする。
「そ、そんなわけないじゃん」
 少し笑い方がぎこちないことが彼女の仮面が崩れてきた証拠だ。
「気にする事ないよ? 演技している人間なんて僕の知っている人の中にたくさんいるから」
 これは本当のことだ。
 委員長以外にもたくさんいる。そうしているうちに委員長はいつも通りの笑顔に戻ってしまった。
「何の話? ごめん、私塾があるから帰るね」
 あからさまな嘘をついて彼女は図書室を出た。

〜真由美視点〜
 ばれてしまった。あの、山本君に。仮面を、かぶっている事。
 山本君は人気者だ。
 人がまわりにたくさんいる。
 山本君が私のことを、話したら。
 私は、嫌われるだろう。
 山本君の周りの人に。
 私の、クラスメイトに。
 もしかしたら学年……学校中まで!
 そんなわけない、と私は思う。
 でも、絶対ないと言い切れないじゃないか!!
 あんな思いをしたくないから、あんなつらい思いをしたくないから完璧になるように振舞ってきたのに。
 わざわざ転校して新しいスタートにたてたのに……。

 思いつめた私は考える。
——山本君の、あいつの言葉を嘘だと信じ込ませればいい。
 幸い、私はこういったことが得意だ。これくらいなら簡単に出来る。
 多少の誤差は大丈夫だ。
 私ならできる。
 できなきゃ、ダメ。
 絶対成功させるんだ。あの、作戦を。
 私は作戦を考え、ニヤリと笑う。
 これなら、成功する。
 この笑みは私が久しぶりに本心から出した笑みだった。





     *     *     *
なかがき
突然ですがなかがきです。
この話はちょっとシリアスめに書いてます。
次、もしかしたらちょっとこわめになるかもしれません。
私はホラー苦手なのでそんなに怖くはないと思いますが、ギャグは全く入ってないと思います。
それでもよかったら次の更新まで待っててくださると嬉しいです。

Re: 短・中編集 ( No.8 )
日時: 2014/04/12 22:15
名前: 夕陽 (ID: ofW4Vptq)

演技をしている女の子と男の子3

 私が作戦を実行してから一週間が過ぎた。
 山本君は今では嫌われているわけでないけど、「あいつの言う事は嘘が多い」とうわさが流れている。これくらいまでやれば、山本君がたとえあの事を言ったとしても、嘘だと思われるだろう。
 そろそろ、この作戦はやめよう。
 あまりやりすぎると私が不利になる。しっぽをつかまれたら失敗だ。
 私はいつも通り家に帰ろうとした時、靴箱で声をかけられた。
「委員長、一緒にお茶しない?」
 山本君だ。正直今は会いたくない。
 でも、人目に触れているから、断るにしても優しく断らないと。
「あ、ごめん。今日塾があるんだ」
 そういい残し去ろうとすると
「委員長、塾通ってなかったよね?」
 肩をつかまれてそのままひきづられるようにして無理やり付き合わされた。
 もしかして、ばれたのだろうか?
 そんな気持ちがむくむくとわきあがってどう言い訳しようかとそれだけを考えていた。

「で、なんで山本君の家に行かないといけないの?」
 私は山本君を睨む。しかし
「じゃあ、仮面の事や、僕の噂に関する事みんなの前で言ってもいいの?」
 という言葉に黙り込んでしまう。
 言われたら困る。
「とりあえず、入って。今日は僕以外誰もいないから」
 山本君はドアを開けて入らないの? と視線を向けてくる。
 いや、でも簡単に人のしかも仲もよくない異性のクラスメイトの家にお邪魔するわけにはいかないだろう。
「でも、お邪魔するわけには」
「じゃあ、委員長の秘密をみんながいる喫茶店で話す?」
「喜んでお邪魔します!」
 まさか、そういわれるとは……。従うしかなくなってしまうじゃないか。
 やっぱり、あの作戦の続きしたほうがいいかも。
「じゃあ、僕の部屋行く?」
「できれば玄関がいいんだけど」
 私はできる限り早く帰りたいので早口になってしまう。
「ただ、僕の部屋に来てくれたほうが説明しやすいんだけどな」
「そっちの方がすぐ終わる?」
「うん、たぶんね」
 私は少し悩んでいった。
「じゃあ、行く」
 とにかく早く終わらせたいから。

「散らかってるけど……」
 そういって私を部屋に入れる。しかし、その言葉とは裏腹に部屋はそこそこ片付いている。
「で、話ってなに?」
 私は話がすぐに終わるように聞く。
「うーん、いい話かな?」
 いい話? 一体なんだろう。
「委員長と同じように、仮面かぶっている人いるよ?」
 それは、嬉しい話だ。
「誰?」
 しかし、そのことがばれないように無表情になる。演技は得意だから。
「ここにいるよ?」
 ここにいるって、山本君しかいないじゃん。っていうことは
「山本君のこと?」
 山本君は大きく頷く。
 まさか、本当にあっているとは……。
「でも、本当に?」
「本当だよ。見てみる? 本当の僕」
 挑戦的な言葉に私は怖いもの見たさも手伝い首を縦に振った。
「本当の俺はね、こんな感じだよ」
 そのとたんに仮面が剥がれ落ちる。
 その中にあったのは、

——全くの、無表情。

 怖いくらいの無表情。
 その表情を私は呆然と見ていた。

Re: 短・中編集 ( No.9 )
日時: 2014/04/13 15:07
名前: 夕陽 (ID: ofW4Vptq)

演技をしている女の子と男の子4

「俺もね、かぶってるんだ。仮面。だから分かった。君が仮面かぶっている事」
 無表情のまま淡々と言う山本君。
 怖くて逃げ出したい気持ちが渦巻いてくる。
 でも、逃げる事はできない。だって、

——背中を見せたら、殺されそうだから。

 素手なのに、刃物を持っていないのに……。
 こんなに恐怖を感じる。
 何考えているんだろう? 私が怖がるわけ、ないじゃないか。
 むしろ、怖がられるほうのはずだ。
 適当に言い訳をして落ち着かせる。
「何で……私に、話しかけたの?」
 でも、震える声になってしまった。
 やっぱり、怖いのだろうか。
 これ以上あの瞳を見ていたら、私も狂ってしまいそうだ。
「それはね、君が俺の事一番分かってくれそうだから、かな?」
 こっちに向かってにっこりと笑う。
 その笑みは仮面をかぶっている時の無邪気な笑みとは違い、背筋を凍りつかせるような笑みだった。
「どういう……こと?」
 もう、泣きそうだ。
「君なら僕と仲良くしてくれそうだったからね」
 よく分からない。
 いつも、君の周りにはたくさんの人がいたのに。
「いつも、俺の周りに人がいるからそんな必要ないって思ってる?」
 私は首を縦に振る。
「そんなわけないじゃん。あの人たちはこんな顔、知らないよ」
 そんなこといわれても……。
「ねえ、俺と“友達”になろうよ」
 少し表情を出し聞いてくる。
 でも、私は誰とも友達なんかになりたくないっ。
「いや」
 そう言い残し、ドアを開け帰ろうとする。しかし
「そうなんだ、残念」
 彼は、私の首に手を伸ばす。
「ちょっと気絶するだけだから」
 その言葉の数秒後に私は意識を失った。

〜山本目線〜
「これでよし」
 俺は、委員長を気絶させた後、記憶を消す薬を飲ませる。
「とりあえず、学校に運ぶか」
 そうすれば勝手におきるだろう。
 学校に行くなら、仮面をかぶらないとな。
 僕は仮面をかぶる。
「じゃあ、学校に行こう」
 委員長を背負い、学校に行く。
 部活が終わるのはそろそろだから急がなくちゃ。

 学校についた後は保健室に寝かせてその場を去った。
 これで、誰にもばれていない。
 僕の仮面の事は。

〜真由美目線〜
 私が目を覚ましてはじめに目に入ったのは白い天井だった。
「私は……何を、していたんだろう?」
 ぼんやりする頭で考える。
 そうだ、確か山本君に仮面がばれたから、あの作戦を実行するんだ。

 私はあの作戦を実行するため、起き上がった。

 数日後、彼は確実に弱りきっていた。
 これ位すれば大丈夫だろう。
 こうすれば、そろそろ不登校になるはずだ。
 私はにやりと笑って彼を見つめた。
—END—





     *     *     *
あとがき
意味不明な終わりかたですみません。
結構思ったよりも長くなりました。

補足説明
記憶をなくすくすりというのがありましたが、それが効きすぎて真由美は仮面をかぶっているとばれたところまで記憶が消えたという設定です。
分かりにくくてすみません……。

次は何を書こう?