コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 短・中編集(参照800突破感謝!) ( No.89 )
日時: 2015/01/09 23:24
名前: 夕陽 (ID: jP/CIWxs)

「言う」を使わないで短編!

 と言うわけで久々に小説です。
 台本書きではありません。
 地の文に「言う」を使わないで書けたらいいなと思います……。
 と言うわけで本文は下からです。

     *     *     *

「こんにちは」

 そう声をかけられたのは部活の帰り道。
 休日なのに部活ってついてないなー、と思いつつ歩いていた。
 私はその子を見た瞬間息を呑んだ。
 その子は茶色がかかった少しふわふわしている髪の毛を左右で結んでいた。そして前髪は私から見て左に留めている。目はぱっちりまではいかないものの細くはない。
 簡単に言うと私にそっくりな子だった。
 双子と疑うくらいに。

     *     *     *

「え? 私のはとこ?」

 とりあえず近くにあった公園に行きベンチに座る。
 部活の道具が入っている鞄を膝に置いて彼女に向き直る。

「うん、そうなの。本当にそっくり〜」

 彼女が眉尻を下げると私が笑っているような錯覚を覚える。
 血がつながっているが双子ではない私達が何故ここまで似るのだろう?

「お母さんから聞いていたんだ。私に似ているはとこがいるって」

 ただ、少し違うところがあった。
 彼女は笑うとえくぼが出来る。
 口の少し下の方に。
 私にはないものだ。

「ふーん。で、何できたの?」

 本題はこれだ。いきなり似ている人にあってどうしたいのだろう?

「ちょっとお願いがあってね……」

 彼女はポケットから携帯を取り出した。

「この人に会ってくれないかな」

 待ち受け画面に出てきたのはそこそこかっこいい男の人。
 二人で写真を撮ったようで私に似ている彼女も一緒に二人とも笑顔で写っている。

「なんで? というか誰?」
「ケンカ、しちゃったんだ。でも素直に謝れないから。後悔しているけど素直に謝れないから頼もうと思って。私に似ている人に。ちなみに彼の名前は大宮純。私は島田梨香」

 島田梨香。
 名前も少し似ている。
 そのことに驚きつつも私の答えはもう決まっていた。

「無理。だって自分で伝えなきゃ意味ないよ?」

 私も友達とけんかしたことあるから分かる。
 他の人に代わってもらっても根本的な解決にはならない。

「なんで!? 私とあなたそっくりだから純も私が謝ったと思うし大丈夫だよ!」

 どうやらばれるのを恐れていると思われているらしい。

「違う。あなたの気持ちはあなた自身で伝えたほうがいいってこと」

 私は彼女の瞳をまっすぐ見て告げる。

「そう、だよね……。やっぱり自分で伝えないと」

 彼女はゆっくり立ち上がる。
 そして数歩歩いてから私の方に振り返った。

「ありがと。自分でも迷ってた。他の人に頼んで逃げていいのかって。迷いが吹っ切れたよ」

 彼女は笑顔を残してもと来た道に戻っていった。

「私も帰るか」

 私も立ち上がり家路を急いだ。

     *     *     *

 そのことから数週間後、彼女から手紙が来た。
 内容は上手くいったとのこと。
 少し安心すると共に追記の文が気になった。

『凛花ちゃん、今度よかったら遊びに来てね』

 それはいいのだが、住所がどこにも書いてない。
 お母さんに聞けば分かるかな?

 そう思いつつ私は空に向かって心の中で

——また梨香ちゃんにあえるといいな

 と呟いた。

—END—
あとがき
「言う」使ってなかったでしょうか?
もし使っていたら言ってください!