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Re: 俺の学費=彼女達の家庭教師代(勉強ネタ多め) ( No.29 )
日時: 2014/08/13 12:26
名前: 夕陽 (ID: KVjZMmLu)

12時限目 歴史 大王の時代

大仙古墳のような古墳の形をなんていうか答えなさい。
「鍵穴型」
 確かに鍵穴の形に似てるけどメアリは不正解だ。
「前方後円墳」
 緑は正解。
「古墳」
 その古墳の種類を答えろって言ってるんだよ!
 真田先輩は通常運転だ。……悪い意味で。

「じゃあ今日の授業始めるぞ」
 俺の一言で皆こちらを向く。最近は注目されるのも慣れてきたな……。
「3世紀後半になると奈良盆地を中心とする地域に近畿地方の有力な豪族が支える強力な勢力、大和政権が生まれたんだまた王や豪族の墓、古墳が作られるようになったんだが三種類いえるか?」
「普通の古墳と銀の古墳と金の古墳だろう」
「なんか泉に投げ入れたら出てきそうですね……。っていうかふざけてるんですか?」
「真面目にふざけている」
 真顔で肯定された。真田先輩、中間テストどうなっても知りませんよ……。
「円墳・方墳・前方後円墳〜」
 緑があっさり正解を出す。
「正解。じゃあ次。古墳が盛んに作られた6世紀までを古墳時代というんだ。皆分かったか?」
「古墳が作られたから古墳時代……」
 呟くように言ってノートにメモするメアリ。
「私は分かりました〜」
「僕も分かった。古墳は普通の円墳、普通の方墳、普通の前方後円墳だな」
「“普通の”はいりません!」
 真田先輩につっこむと冗談だぞ? と笑われた。真田先輩の冗談は冗談に聞こえないんだよ……。
「まあ次行くぞ。古墳についてだ。古墳は表面に石がしきつめられてはにわがまわりに置かれた。はじめは祭の道具が置かれたが段々農具がおさめられるようになってきた。また古墳に描かれた絵から死後の世界についての考えを知れる」
「死後の世界ですか〜。なんか神秘的ですね〜」
 緑が嬉しそうにいう。そういえば妖精とかそういうこと緑は好きだったな……。
「そうだな。で次いくぞ。中国の話だ。中学では4世紀から国内が分裂し5世紀ごろから南北に分かれて国々の対立が起きたんだ。このことをなんていうか知ってるか?」
「南北朝時代ですよね〜?」
「正解。また朝鮮半島では高句麗(こうくり)と4世紀ごろにおこった百済(くだら、ひゃくさい)と新羅(しらぎ、しんら)の三国が互いに勢力を争った。大和政権は百済や伽耶《(かや)もしくは任那(みまな、にんな)》地域の国々と結んで高句麗や新羅と戦ったことが好太王碑に記されているんだ。ここまでで質問は?」
「特にない」
「私もないです〜」
「僕もだ」
 三人とも大丈夫なようなので次に進めるか。
 そこで、俺はありえないものを目にした。
 ありえないものとは授業に使うような普通のノートだ。
 しかし開いているページには何も書かれていない。真っ白なまま。
「真田先輩、書かなくて覚えられるんですか?」
 少し怒り気味に真っ白なノートの持ち主に言う。
「書いてあるぞ? あぶり出しで」
 どうして授業用ノートあぶり出しで書くんだよ!
「先輩、普通の授業のときはしてませんよね?」
「してるぞ? 前それをやったら大受けだったもんでその日から毎回やってる」
 マジか……。あきれてものも言えない。
「とにかく授業次に進めろ」
 促されるままに俺は授業をする。
「次いきます。前方後円墳の分布によれば大和政権の王は東北地方から九州地方までの各地の豪族をしたがえ大王(おおきみ、だいおう)と呼ばれていたらしい。また、南朝の宋の歴史書である「宋書」には倭の王としての地位と朝鮮半島南部の軍事的な指揮権を中国の皇帝に認めてもらおうとして何度か使いを送ったことが記されているんだ」
 とりあえずそこまで言って皆を見るが特に困った顔はしていない。
 次に進んでも大丈夫だろう。
「朝鮮半島から日本列島に移り住む人々が増えた。このような人たちをなんていうか知ってるか?」
「渡来人、だろ?」
 意外にも正解を出したのは真田先輩だった。
「正解です。よく分かりましたね……」
 驚きと感心が混じった顔で言うと真田先輩は
「まあな」
 と胸を張った。
「明日、傘持って行かないと……」
「おい、僕が正解出すのがそんなに珍しいか!?」
 つい心の声が漏れてしまった。
「すいません、半分くらい冗談です」
「半分は本当ってことだろ!?」
 謝ったのに怒られた。理不尽だな……。
「次進みましょうか」
「スルーするな!」
「で渡来人ですが彼らは鉄製の農具や農業用のため池の作り方、須恵器と呼ばれる高温で焼く硬く黒っぽい土器や上質な絹織物を作る技術も伝えたんだ」
「……スルーされた」
 いつもより元気がないのも調子が狂うのでフォローするか。
「真田先輩、真田先輩のこと嫌いじゃないですよ?」
「本当か?」
「うざいですけど」
「あげて落とされた!」
 衝撃を受けている真田先輩。
「冗談ですよ。真田先輩のこと、好きですよ」
 これ以上いじるのもかわいそうなのでそう告げる。
「そう言ってまたうざいとかいうんだろ」
 少しすねているようだ。
「言いませんよ。ただいじりすぎちゃっただけで先輩のことうざいとは思っていません」
 そう言って微笑むと真田先輩は
「……授業、進めろ」
 と少し顔を赤くして言った。
「はい。じゃあ次いきますね」
 そう言って教科書に目を落とす。
「渡来人は漢字や儒学、6世紀半ばには仏教を伝えた。それ以外にも朝廷の記録や外国への手紙作成など財政や政治でも活躍したんだ」
「渡来人ってすごいね」
 メアリが俺の説明を聞いてそう言った。
「そうだな。じゃあ今日の授業はここまで。また明日」