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Re: ラナンキュラスと少女 ( No.14 )
日時: 2014/05/06 17:28
名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: kPuJF6ZA)
参照: 黒橡(くろつるばみ)→黒に近い濃いねずみ色だそうです。

轟音から、しばらくして。

彼は地味な色の表紙の図鑑を片手で抱えながら私の前に現れた。
やれやれ、といった表情を浮かべているが、立場的に考えればその顔をするのは____私のほうじゃねえか?


ラナンキュラスってのはね、この地域じゃ咲いてないんだよ


私が脳内で反芻している間にも、彼は話し始めてしまう。
この感じは、あの子、リリーに似ている。
こちらの思考を、理解を待たずに話す感じが、どうしようもなく。


「咲いてないってことは……それ、花ってことか?」

「そうだね。だから俺も花言葉をちょっと調べてみたんだけど」


そこまで言い___モノクル越しに彼の目が細まる。
口調の柔らかさから、微笑んでいるものと解釈した。

「その子に、教えてやりたいと思ったね」

「私には教えてくれないのか?」
「今度そのリリーって子と一緒に、知ると良いさ」

きっとお前も、リリーも二人そろって驚くだろうね。

余裕を持った口調で、しまらない笑みを浮かべる。
なんだか、秘密にされているようで、悔しい……

「えい」

ちょ、なにしてんのフェ___痛っ!?

クレドの黒橡色の結わいてある髪の毛を引っ張る。
私は、彼が余裕そうなのをみると、こう、いじりたくなるのだ。


「さて、ということはクレドも一緒にくるんだろ?」


さっきまでの優勢はどこへやら、痛そうに頭をさすっている奴に問いかけを投げる。


「そうするしか、ないだろうね。準備が出来たら明日にでも行くさ」
「そうだな、女の子との約束は破っちゃいけないもんな?」

先ほど彼がしたような含み笑いを、私はする。これでお相子だ。


約束ってなんのことだい?フェリス。

きょとんとした表情で聞いてきた、が、教えてやらない。


「さぁ、なんだろうーな」
手を頭の後ろに組み、彼に背を向ける。そのまま話を続ける。

「私はあの子にお菓子でも持っていってやろうかな」
「お前はそれをもっていってやればいい。クレド」


私からは甘味を、お前からは知識をくれてやればいい。




私を待つ、あの花に。