コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ラナンキュラスと少女 ( No.15 )
- 日時: 2014/05/16 20:43
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: AwgGnLCM)
ああ、朝が来たようだ。といっても、やわらかな光はここに入らない。
なのに気づけたのはなぜかというとね、あのね、足音が——
「クレド!!」
「ああ、おはよう……フェリス」
「その顔、あんた今のいままで寝ていただろう!?」
彼女が、その体から想像できないほどの大きな足音をたてて、
この、地下室に来たからなんだけど……
自分の、まだ夢をみているような目を擦る。
そうだ、昨日、リリーに何て紹介するか、考えていたんだよなぁ。
そしたらこのザマだ。どうだ、笑うが良いさ。
「支度したら出てくるんだ!いいか!わかったな!?」
怒涛の速さでまくし立て、彼女が勢いよく閉じたドアのおかげで、俺の言葉が遮られる。
「……まだ寝ていたい」
「そうだ、着替えて、……後この本も持っていくか——」
そう呟いた直後、棚に足をぶつける。痛い。
「寝るな」という彼女のメッセージなのだろうか?
そういうことならばこれ以上粘ると体に痣がつきそうなので、もう諦めた。
支度をすませた後、なるべく早足で彼女の元へ向かう。
階段を上り、ドアをあけ、廊下を走る。
玄関に通じる扉は——どこだっけ。
自分の家より、複雑な気がする。
ああ、ここだった。自分が外へでる手段をどうにか見つけ、安心感に浸る——
だがそんなことをしてるばあいじゃない。我に返りドアノブを回す。
「遅いぞ」
予想はしていたが、俺の姿を見るなり威圧的な視線を向けられる。
琥珀色の目で、執拗に睨んでくる。
「ケーキ共々私も溶けるところだ。何か言うことは?」
いやケーキは溶けないでしょう——とそっと反論を心の中でする。
「申し訳、ありませんでした」
何とか許しをこわなければ、そんな念が透いて見えるような笑顔で言う。
「よくできました!!さあ、いくぞ!!」
神様、彼女が単純で本当に良かったです。
フェリスは満足そうな笑みを浮かべるなり、走り出してしまった。
「……はぁ」
ケーキの安否の心配も手伝い、
今も勝利の笑みを浮かべているであろう、すばしっこい猫の後を追うことにした。