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Re: ラナンキュラスと少女 ( No.16 )
日時: 2014/05/06 22:01
名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: AwgGnLCM)




「……なんなんだ、あの子は」





自分の喉は焼切れそうに悲鳴をあげているというのに、一向に彼女のスピードが落ちない。俺が普段運動しないから、ここでツケが回って来たのかもしれない……

地面にへたり込み、休もうとする。と、


「はいはい貴方の偵察機ちゃんが迎えにきてやりましたよー」
馬鹿にしたような、声が耳に入る。

ソレ自分で否定してなかったか——否、そんなことよりも彼女の勝ち誇った笑みが気になる。
完全に見下されている構図だ。

「クレド、お前はちゃんと日頃から運動しな?
 その図鑑でももって走れば体力つくぞ」

悔しいやら情けないやら苦しいやら、で顔が紅潮する。

「女の子みてぇ」

手を差し伸べられる。

「お前は男みたいだよ」

その手をとる。

なんとか立ち上がり、歩き始める。
「割りと楽な道だね、帰り遅かったから苦戦したのかと思った」

自分の感情を紛らわす様に話しかけた。

「なにいってるんだ、道がもう乾いているんだから当たり前だろ?」
「とりあえず泥がすごかったんだ、泥が!
 あと落ち葉とか葉っぱで道が見えなくて……まだあるぞ!空が——」

さながら機関銃のように話し始める彼女の話を聞きつづける。
語彙力はどうやらその泥にもっていかれちゃったようだけどね。



「それが大変でさぁ、あと———」

そこまで話し、フェリスは口を閉じた。
気になって前方を見る。すると、調べたとおりの家が建っていた。
ここに、少女が、ラナンキュラス・リリーがいるのか。

「リリーには優しく話すんだぞ?」


わかってるさ。

「一応お前の分もケーキは買っといてやった。お茶会でもするつもりで、話を聞き出せばいいと思うんだ」
「クレド、目的はあの家の実態を研究することなんだろ?」



ああ、そうだったっけ。


「おいおい、私はそう頼まれたのにどうして当人が覚えてないんだ?」
「昔からだけど、記憶力が無いなぁ」



ごめんごめん。



「でも正直いって、私も大して覚えていなかった、覚えたくなかった」




へ?




「なんでもない」




____彼女の呟きが聞き取れなかった、が、それを聞き返す気にも何故かならなかった。


「さあ、行こうか」
気を取り直すように、彼女を先頭にし、あの少女の住む空間の、入り口をノックした。