コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ラナンキュラスと少女 ( No.17 )
- 日時: 2014/05/09 23:09
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: AwgGnLCM)
「あっ」
フェリスの言っていた、「リリー」が、目の前に突っ立っていた。
少し驚いたような顔をしているあたり、恐らく向こうもドアを開けようとしていてくれたのだろう。
だが、たった今俺の隣の奴が痺れを切らして先にこちらから開けてしまったので、折角の親切が無駄になってしまったけれど……
「フェリス……こんにちは。」
「そのひと、だれ?」
黒目がちな瞳が、不安そうに揺れる。
多分、疑問の矛先は俺なのだろう。意味もなく罪悪感に駆られる。
「ああ、この男は私の友人の——」
リリーの問いに、フェリスは軽く挨拶を返してから、説明を始めた。
どうやら彼女に任せてよさそうだ。余計な事を言わなければいいけど。
「……くれど・べるつ?」
「そうさ。良かったら覚えてやってくれ。」
舌足らずな、慣れない喋り方だと思った。やっぱり人との会話が少なかったからなのかな?どのくらいの間かは見当もつかない。
「じゃあ……こんにちは。クレド、さん」
そう、俺に向かって挨拶をしてくれた。なるべく笑顔でそれを返す。
でも何故か、少女の、不安の色が、中々引かない。どうしてだろう。
「さ、挨拶もすんだことだし……リリー、椅子はあるか?」
「いす?いっぱいあるよ。」
フェリスは部屋を見回しながら、リリーに人差し指を立て、指示をする。
「……フェリスも、手伝ってほしい」
俺の挨拶の時とは段違いの、ほんわかした笑みが向けられていた。
「いいよー……でもその前に、クレド!!」
名前を呼ばれると同時に、金色のリボンが結ばれた箱が手渡される。
受け取ると、甘い香りを感じることが出来た。ケーキが入っているのかな?
確かこの包装は見覚えがあるような……なんだっけ?
「ほら座れー!何でそんなとこに立ってんだ?」
「——あ」
俺が悶々と考えをめぐらせている間にも、リリーとフェリスは椅子を並べ終わったらしい。
白いレースを模したような生地が机には敷かれていた。
———まぁあいつなら、「レースがそのまま敷かれてる」と思うのだろうな。
想像して、笑いそうになる、が堪える。
先ほど手渡された箱を、ぽん、と置いた。
リリーとフェリスは隣同士に、俺はというと————
やたらと存在感のある、大きなうさぎの人形の隣に座った。
——フェリスはどうしてこの事に触れないのだろう。
そんな思いも、人間であるから通じるわけもなく——
彼女が笑顔であけた箱から、ショートケーキが3つ、覗いていた。