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Re: ラナンキュラスと少女 ( No.31 )
日時: 2014/05/18 18:59
名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: AwgGnLCM)

俺は台所に置いておいた本を手に取る。
無意識の内に、安全な所に置いていたようだ。

「フェリス」
リリーは彼女の名前を呼んだ。その顔は一見何ともないように見えるが、良く見ると疲れが浮き彫りになっている気がした。


「わたしもまちへいきたいけど、すこしつかれちゃった……から」
——そんな目で俺を見ないで欲しい。
こんな奴に気遣いなんて必要ないんだよ、仮にも君を傷つけたんだから。

「ここでちょっとだけねててもいいかな」
言いつつ、床にそのまま小さな体を横倒しにした。
綺麗な銀髪がはらり、と床に落ちる。

感情は人を疲れさせるって、俺は思う。とくに、負の感情は。
それを生ませたのは、紛れもない自分で……
だからリリーちゃん、俺のせいだから気にしないで——
ごめんなさい、と先ほどの彼女のように呟いた。

ううん、と疲れきったような笑顔で、目だけこちらに向けられる。



「そーかそーか……じゃ元気になるまで私ら待ってるから」
「ゆっくり休んでね。リリー」
そういつつフェリスがドアに向けていた体を、ぐるり、とこちらに向ける——その拍子に、肩までゆるく巻いてある栗色の髪が揺れた。



「ふぅ……。話は外で聞こうか……ちょっとこい」
リリーが寝息を立て始めたのを確認し、フェリスは俺の手を思い切り引っ張り、ドアを開け、外へと連れ出した。

外の眩しさに目を細め、空けると凄みのある目で睨まれていた。
ああ、この光景は確か前にも見たような——


「リリーには優しくといっただろう!?」
「もう部屋の中にいる時の皮肉程度じゃ私は終わらないぞ!!」


——そして、また怒られる。

「ちょっと待って、それは悪かった。でも、まず分かった事があるんだ」
「はぁ……?その話はすぐ終わるんだろうな、おい」
相手の文句を聞いてから自分の言い分を。割と良くやる。

「リリーは、あのとき」

——あのひとがこれをわたしだとおもってって、おいていった

って言わなかったかい?
じゃああの家にはリリー以外にも誰か住んでたって事さ。
しかも素直に要求を呑んでいた——よっぽど信頼されてたんだろうね、
リリーのいうたいせつなひと、ってやつは。

そこまで言い、怖くなった。どうして?
——彼女は少なからず、俺らが来るまで、あのうさぎのにんぎょうとすごしていたってことが分かったから。

生身の人間と同じように。話しかけて、食べ物まであげてたといっていたっけ。
——あの子は人という領域を逸脱しているのか。
  それに食事は?風呂は?着替えは?


「じゃああの子は何なの?」
フェリスの苛立った様子はいつのまにか色を引いていた。
当然だ、話しをしているこちらまで、恐怖がこみ上げてきたんだから。



「さぁね……でも一つ言える事は」
「何」

「彼女が東洋人だって事」
——あの綺麗な目、見た?俺らのと違うでしょ?
そういって、自分の目じりを、人差し指で軽くつく。

「じゃああの銀髪はなんだと思う?」
俺はそう問われる。
「突然変異——アルビノかなぁ?」
「そうだったら目も赤いでしょう?」

——もう、自分で質問したくせに。
  俺だって適当な答えを提示して、悪かったとは思うけどね。



そもそもあの子が、どこから来たのかすら知らないことに気づく。
「あの子は、一体いつからあそこにいたんだ?」


小さな足音が近づいてくる。

話の中心となっていた彼女——リリーがドアを思い切り開けて。
その表情は、俺らが浮かべているのとそっくりで、

——恐怖?
そして、リリーは悲鳴をあげるようして言い放った。