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Re: ラナンキュラスと少女 ( No.32 )
日時: 2014/05/18 21:18
名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: AwgGnLCM)

フェリスと、クレドがドアをしめてでていった。
ひっぱられていたけど、あのおとこのひとはだいじょうぶ、かな?

つめたいゆかにからだをたおしたまま、わたしはかんがえる。
クレドのいってたとおり、わたしは——あのひとのなまえをおもいだしていたのかな?
すこし、こわかったなあ。


——ああ、あたりがくろく、せまくなっていく。やっぱりかんがえるのをやめて、しばらくねていよう。




——だれがはいってきたのかな?あしおとがちかづいてくる。

「へぇ、この子が噂の?随分小さいね」

だれだっけ?

「そうだなあ、少しの間なら、うん、うん」
よくみると、いえのそとにもだれかいて、はなしているみたい。
「ちょうど私も寂しかったところさ、いいんだよ」

ぱたん、とドアがしめられて、へやがくらくなる。

このひとのなまえが、しりたいとおもった。わからないのって、おちつかない。


——こんにちは、私の名前は×××××××・リリー

あれ?なまえがきこえなかった。ここはほかのおとはきこえるはずがないのに——


「ううん、君の名前はどーしよっかなー?」
「そうだ」

ぼんやりとしていたすがたが、うかびあがる。——おんなのひとだ


「ラナンキュラスなんてどうだろう?そんで姓は私のをとって——」
「リリーだ、リリーにしよう」

そのひとは、わたしのなまえをつけてくれて……
じゃあこのひとが?


「じゃあほかのひとにあいさつするときは」
「こんにちはっていうんだぞ」

「それじゃ、練習だ。こんにちは」
——ラナンキュラス・リリー!!

「こんにちは……」

わたしのくちから、かってにことばがはきだされる。きみがわるい。
そうおもっていると、まためのまえがくろくなる。


——ぼんやりとしたけしきがうかびあがり、

「ただいま、ラナンキュラス」
「もう、寝ちゃったのか?ケーキ買って来たぞ」
あのひとがちかづいてきた。

このひとがわたしにとってのたいせつなひとなら、わたしにたいしてわるいことはしないはずだ——そうおもってほほえむ、

いや、ほほえもうとした、けれどそこでまたけしきがとぎれる。
ケーキをつかもうとしたうでは、くうきをつかむようだった。


——まただ。こんどはひがくれている。

「なぁ、ラナンキュラス」
「君の親は誰なんだ?どこに住んでた?」

「えっと、××××××××——」

わたしのしらないばしょのなまえと、しらないひとのなまえはまたつぶやかれる。もうおぼえていないはずなのに——

ばち、とめのまえにひかりがみえて、またきりかわる、——きおく?


「おわかれだ。元気でな」

「ラナンキュラス・リリー」

「私はもうここに戻るつもりはない、そしてこの家は誰にも見つからないだろう。わざわざこんな所にたっているのだから。」
「食事をとらなくたって生きていける。今更だけど——君は本当に人間なのかな?」

おんなのひとはじょうだんでも、いうようにわらった。
——なにを、なにをいっているの?


「さあ、この人形をわたしだとおもってもっているんだよ」
「きっと、長い間一人だろうから——」

そういって、みおぼえのあるにんぎょうがさしだされる——
わたしに、だ。

わたしが、もうひとりいて、ないている——
いつのまにわたしは、じぶんのできごとをはたからみていたの?
——わかりたくなかったから?みとめたくなかったから?


「大好き」
おんなのひとがそういうとわたしがだきしめられて、そのひとはドアへと向かった。


ああ、思い出した。

思い出したの。あの人にもらった知識と愛情、私嫌われてなんかなかった。

ごめんなさい。ずっと忘れてた。

でも、もう間に合わない。あの人はドアを開けて、どこか知らないところへいってしまう———

泣いている場合じゃないのよ、とあの子——わたしに怒りたい。
あの人を引き止めたくなった。どんな手を使ってでも。


——でもそれは叶わない。

嫌、嫌、嫌!!!





——そこで、はっとした。
  白昼夢?
暢気な空気が、寝ている私の体を包んでいる。床のひんやりとした植物の感触が、伝わってくる。

——話し声が聞こえる。どうしてか、ドアを開けたくてたまらなかった。
手遅れになってしまう、気がして。



思い切りドアを開ける。
そして、泣きそうな声で叫んだ。


——待って!!