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Re: ラナンキュラスと少女 ( No.7 )
日時: 2014/05/16 20:40
名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: AwgGnLCM)

聞いたことのない名前だと感じた。遠い地から、ここに引っ越してきたのだろうか。



「ら、らなんきゅらす……?へえ、珍しい——」

「リリーでいい」

「……う、うん」


先ほどより強めな口調で、遮られる。しかしその目は伏せ、こちらをもう一度、見る気配がない——

ラナンキュラス・リリーと名乗る少女は、深い紺色の服を纏っていた。

鈍く光る銀髪と、淀んだ目をふと見やる。
言い方は悪いが、まるで葬式帰りのようだ。

とても、とても大切な誰かが、亡くなってしまい、
自分の支えを、奪われたような。心を、もって行かれてしまったような。そんな——



「わたしは、このなまえのいみが、わからないの」


唐突にリリーが話し始める。私は思考を止め、耳を傾けた。



「わたしの、たいせつなひとがつけてくれたなまえなのだけれど。
 たしか、いみがあったとおもうのだけど。
 もう、わすれちゃったなあ」




銀髪の少女の声が、震える。


「あのひとは、わたしをおいていって、しまった」



「あのひとは」


「わたしのことがきらいだったの。
 わたしはきらわれて——」








「リリー!!」


咄嗟に、リリーの腕を、無理やり掴んだ。
小さく、短く悲鳴をあげて、こちらに顔を向けた。



その拍子に、



喪服の少女の目から、涙が、感情が、零れ落ちた。