コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 制服は脱ぎ捨てて、今夜、君と。【9/21更新】 ( No.132 )
- 日時: 2014/09/27 14:12
- 名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)
最終章 恋と女子高生
パステルの紫色のワンピース、手には二つのケーキが入った箱を持ち、私は薫の家に向かう。
今日は薫の家で勉強会だ。来月のテストに向けて学習を進めなければならない。
——そして、薫に今の気持ちを伝えなければならない。
薫の家のチャイムを押す。ドタバタという足音がしたかと思うと、すぐに扉が開く。薫が笑顔を見せながら私を迎えてくれた。
「いらっしゃい、水帆!」
「……お邪魔します」
薫の顔を見ただけで、胸が躍るように騒ぐ。今まではこんな気持ちになることなんてなかった。改めて自分は薫に恋をしているのだということに気付かされる。
薫の部屋に上がり、ノートと教科書を開く。薫の教科書は計算の過程や重要単語がたくさん記されていた。しっかり勉強しているのだな、と思う。まだ彼を弟気分で見ているのかもしれない。
黙々と勉強を始める。
橋本先生の担当科目、数学をやる度に少しだけ、彼の名前を呼んだこと思いだす。先生も私の名を切なく、甘く……少し掠れた声で呼んだあの日を。
「……薫、休憩しない?」
「水帆から休憩なんて……! 良かったー結構限界だったんだよね」
ほっとしたように薫が笑う。
私はそれを見てから、持ってきたケーキを取り出す。薫も席を立ち、紅茶を入れてきてくれた。
「テレビでもつけようか」
薫がリモコンを操作する。かかったのはとある音楽番組だった。
『続いての曲は、中高生に絶大な人気を誇るバンド“planet”で「baby」です』
君はずるい人だね
僕を待たせては笑顔を見せる
ah 早く早く
君の気持ちを教えて
君を僕のモノに出来るなら
それ以上は何も望まないのに
ah baby
君のホントを教えて
ボーカルの透き通った声が薫の部屋に響く。
薫を見ると、テレビに釘付けになっていた。それは当然かもしれない。まるで、今の私たちのような曲だから。
薫は私を待ってくれているけれど、物事がどう転ぶか分からない中で人を待つのはどれだけ苦しいだろう。
「……あのね、薫」
「——ん? 何?」
一瞬遅れて薫が反応する。
伝えなきゃ。伝えなきゃ……私の気持ちを。
「私、薫のことが好き」
「え?」
「薫が……私に“恋”を教えてくれたから」
戸惑いを隠せないのか、目が泳いでいる。私は、薫の言葉を待った。数秒たち、薫が控えめに口を開く。
「……本当に?」
「うん」
そう言うと、薫は耳まで赤くした。それを両手で隠すようにして薫は続きを紡ぐ。
「……嬉しい。ごめん、顔ニヤける……みっともないな、俺」
両手で隠された隙間から、赤く染まった薫の頬が見える。そんな薫をずっと見ていたいと思った。
「ううん、そんなところも好きなの」
「——! 水帆、抱き締めていい?」
両手を下ろし、顔を見せてくれる薫。私も薫のように頬が真っ赤に染まっているのだろうか。この躍る気持ちを抑えつけて冷静な私でいられているだろうか。
「確認するとか、薫らしい……いいよ」
ふっと笑ってから、そう答える。
すると、強引に私は薫の腕の中に包まれた。
「水帆、大好きだ」
「私も」
薫の強引な抱き締め方が堪らなく愛おしかった。一生、この中にいてもいいと思えるくらいに。
「——じゃあ、今後は水帆は俺だけのモノってことだよね。ずっと俺の側にいて、俺が閉じ込めていいんだよね」
「……ん?」
「好きだよ、水帆。俺の腕の中にいる可愛い水帆」
……時々薫はキャラが豹変するのだろうか、と思いつつ私は何も言わなかった。過去にも薫の独占欲の強さを垣間見たからかもしれないけれど。
こんなにも私を愛してくれる、この人が大好き。
この想いに嘘偽りなんて何もなかった。
完