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Re: 制服は脱ぎ捨てて、今夜、君と。 ( No.20 )
日時: 2014/05/24 20:31
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)

 第3章 同情と女子高生

「古典のノート集めるので教卓の上に出して下さい」

 私は皆にそう声をかける。残念なことに今日は私が日直の日。古典担当の飯島先生の元へノートを届けないといけない。

 全員分のノートが集まったため、私はノートを持って職員室に向かう。案外重いノートを持っていたため、少しだけ身体が揺れる。
 職員室に飯島先生はおらず、聞くと資料室にいる、と言われ資料室に向かった。

 資料室の扉を開けると、話し声が聞こえた。飯島先生の他にも誰かいるのだろうか、と思い、話が終わるまで本棚の後ろに隠れて待っていることにした。

「——それで、高槻なんですが」

 急に自分の名を呼ばれて、驚いた。そちらの方を見ると、飯島先生と話していたのは橋本先生だった。

「学習面でも生活でも優秀な生徒なのですが……やはり、一人暮らしということで、心配で」

 橋本先生が飯島先生にそう言っている。「大丈夫」とは言っているけれど、やはり高校生が一人暮らしをしているとそう思われるのは仕方がないのだろう。

「うーん、でも大丈夫じゃないですかねえ。それに、高槻は人に干渉されるのはあまり望んでいないみたいですし」
 
 飯島先生がそう言うのを聞いて、私は勝手に一人でうんうん、と頷く。干渉されるのは確かに好きじゃない。

「そう思うんですけど……そういう思いもあってか、高槻のことをつい気にしちゃうんですよね」

 その言葉を聞いた途端、全思考回路が一瞬止まったような気がした。

「……あ、高槻の話で思い出した。ノートをもらいに職員室に行かないと」
「飯島先生」

 私は飯島先生の名を呼ぶ。ノートを渡す。いかにもさっきまでの話は聞いていなかった、という表情で。飯島先生は「わざわざ悪いな」と言うと、そそくさと職員室に戻っていった。

 橋本先生の方を見ると、やってしまった、という顔をしていた。

「た、たかつ——」
「先生は、私を可哀想な子だと思って接してきたんですか?」

 先生の言葉を遮って私はそう告げた。先生が息を飲んだように止まった。

「私は同情なんて求めていない。そんな思いで今後、私に近づかないで下さい」

 同情で構ってほしくない。そんな「可哀想な目」で見てほしくない。普通でいいのに。普通がいいのに。
 橋本先生は違うと思っていたのに。

「……一瞬でも、信用した私が間違っていたんですね」

 そう言い、すぐさま資料室を出る。「高槻」と呼ぶ声が聞こえたけれど、私は駆け足で教室に戻った。

 きっと、こんなに胸がざわついて仕方がないのは、橋本先生に裏切られた気がしているから。彼を少しだけ、信用していたからなのだと思う。