コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 制服は脱ぎ捨てて、今夜、君と。 ( No.59 )
- 日時: 2014/07/11 21:28
- 名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)
家に戻ってから、改めて薫の想いを考える。
どうして、気付かなかったのだろう。私が鈍感過ぎたのだろう。今まで、薫はどんな気持ちだったの?
いくら考えてもどうすることも出来ない。
今すぐ、君に会いたい。
勢いよく玄関の扉を開き、隣の家に行く。足取りはゆっくりなのに、心は先走っていく。
チャイムを押しても誰も出ない。薫の両親は仕事に出ているのだろうが、薫はいるはずだ。思えば、私が薫に会いに行くといつも笑顔で迎えてくれた。その笑顔にどれだけ癒されたか。
開いていてほしい、という願いを込めて扉を開く。ガチャリと音を立てて扉が開いた。こんなこと、普段なら絶対にしない。それなのに今は別だと思っている私がいる。
「——薫? いるんでしょう?」
そう声をかけても、反応はない。
ゆっくりと歩きだし、薫の部屋がある二階へと向かう為に階段を上った。一つ登る度に心臓の鳴るリズムが速くなっていく。
薫の部屋の前に着き、手で扉をノックする。それでも返事はなかった。しかし、ガタン、という音がした。
それを聞き、返事は聞こえなかったが、思わず勢いよく扉を開く。
「薫!」
真っ暗な部屋で薫はベッドの上で丸まっていた。昔からそうだった。悲しいことや辛いことがあると一人で籠り、顔を見せないようにする。
私に想いを伝えたことは、辛いことなのだろうか。
「何だよ、入ってくるなよ……」
「嫌」
薫にそっと近づく。思い切り、薫の顔を覆っていた腕を引っ張る。どんな悲しい表情をしているのか。
「や、めろっ……!」
「——っ」
予想と違っていた。薫は、顔を真っ赤にしていたのだ。
薫は私が掴んだ自分の手を抜き、私に背を向けた。
「くそっ、格好悪い……。ずっと好きな女に告白したくせに、こんな顔で、見せたくなんかねえんだよっ……」
途切れ途切れに言葉を紡いでいく。私は何も言わず薫の最後の言葉を待った。
「何で、俺ってこんななんだろうな……」
どうして、そんなことを言うのだろう。
だって私は、
「嫌じゃなかった」
「え?」
「薫の気持ち、嬉しかった」
薫が驚いたように目を見開く。
「だって、あんなに恋愛に興味ないって、」
「興味ない。それは変わらないけど……」
何て言えばいいのだろう。こんなこと、考えたこともなかったから、言葉が続かない。だけど、必死に私に想いを伝えてくれたこの人に、しっかりとした言葉で自分の気持ちを伝えたいと思った。
「正直、恋愛がどういうものなのかも分からない。だから、薫が教えてくれる? 私、知りたいの。こんなにも、人の心を動かす恋を」
「……! もちろん!」
「……待っててくれる?」
「ああ」
薫が幸せそうに笑う。
今の私には、それが何よりも嬉しかった。
第4章 完