コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 制服は脱ぎ捨てて、今夜、君と。【企画実施中】 ( No.86 )
- 日時: 2014/08/18 15:27
- 名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)
第7章 酔いの毒と女子高生
「百合さんが今日と明日はいない」と聞いたのはつい先程のこと。
学校帰り、大荷物を持った百合さんと遭遇した。百合さんはこれから隣県の知り合いの家に行くそうだ。ということは、息子の橋本先生は家に一人ということになる。
「南を置いていくのは少し心配なんだけど、私も久しぶりにリフレッシュしたいし」
「そうですね。気を付けて行ってきて下さい」
「ありがとう。水帆ちゃん、もし良かったら南の様子見に行ってくれる?」
「……え?」
「行く」とは言ったものの、男が一人でいる家に——しかも自分の担任教師となると行きづらい。そもそも、二十歳をすぎたいい大人が八歳も年下の女子高生に様子を見てもらうってどういう状況だ。
そんな思いを抱きながら、私は自宅にて生姜焼きを作っていた。自分で食べるためのお皿の横には蓋を開けて入れる準備が整っている容器。結局持っていく自分が偉いなと冗談気味に呟きながら、容器に生姜焼きを詰める。
容器を持って、隣の家を訪ねる。
呼び鈴を押しても返事はない。部屋の電気はついてるから家にいるのは確かだ。開いていないだろうなと思いながら扉を引く。しかし、すんなりと扉は開き、何かあったのではないかと不安になる。
「橋本先生? 高槻ですけど——」
返事がない。電気がついている部屋に向かう。部屋に入ってから思わずため息をついた。
机の上に置かれた何本ものビールの缶とソファに寄りかかっている顔が林檎のように赤い先生。
「——百合さんがいないからってヤケ酒ですか? いくらなんでも鍵を開けとくなんて気が緩みすぎですよ」
「んー? た、かつき……か?」
先生はうっとりとした表情で私を見つめる。見つめるといっても、はたして正常に見えているのかは分からないけれど。
「様子を見に来て正解でしたね」
私は転がってきたビールの空き缶を拾いながらそう言う。百合さんの言っていた「心配」はこういう意味か。
先生に背中を向けて、私は持ってきた容器を袋の中から出す。
「先生、生姜焼き作ってきたので——ひゃ?!」
いきなり背中に重みを感じる。先生が圧し掛かってきたのだと気付くのに数秒かかった。
「ちょっと、何するんですか?!」
離れようとしても力が敵わない。腕も抑えつけられて身動きできなかった。
「だってさ」
先生のいつもより低い声が耳元に響く。首筋にあたる髪の毛が少しくすぐったい。
「男が一人だって分かってる家に来るなんて——襲って下さいって言ってるようなもんだろ?」
「——っ?!」
変な誤解をされて戸惑う。そんなのは男が脳内お花畑なだけだ。そんな気は全くなかった。
「いや、勘違いですから! 離して下さい!」
いくら暴れても先生は力を緩めなかった。どうすればいいのだろう。戸惑いと焦りだけが私の心を浸食していく。