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Re: 世界の果てで、ダンスを踊る ( No.17 )
日時: 2014/09/27 09:02
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 7ouSN2YT)

 —13 強襲、鋼の殺意





 パレスチナでの戦闘を終え、CH-47『チヌーク』の中には陸軍第1大隊第75レンジャー連隊救出部隊と特殊作戦部隊『エグリゴリ』の兵士の少女が乗っている。

 救出任務を終えたレンジャー隊の隊員たちは多くの仲間を失い、戦場で助けることが叶わなかった同胞の為に祈りを奉げていた。

 「・・・・死神め」

 ヘリの格納後部シートに座る隊員のひとりが目の前に座る年端も無い銀髪の少女を睨み、ボソリと呟く。

 首から下げた認識票を握りしめる手に自然と力が入っていた。

 救出とは名ばかり。

 自分たちの任務は戦場の後始末と、眼前にスヤスヤと眠りこける少女の輸送である。

 傍から見れば血生臭い戦場とは、まるで無縁とも思えるこの見目麗しい美少女。

 一体誰があれ程の死体の山を築き上げたというのだろうか。

 「・・・・とんでもねえ化け物だぜ」

 彼のぼやきを聞いた隣の座席の同じ救出隊員が皮肉げに嗤う。

 「あぁ、そういえばお前さんは『こっち側』は初めてだったか」

 訝しげに隊員は彼の方に向く。

 顔は笑っているが、どこか現実味の薄れた、悲愴さを滲ませた感じが漂う。

 「信じられんだろう? だが最初だけだ。直に慣れるさ、嫌でもな。これが当たり前になる。『そういうもの』だと認識しなきゃあな、イカレちまうのさ、そのうちな・・・」

 血と泥で薄ら汚れたヘルメット越しに指でコツコツと自身の頭を叩く。

 同僚の乾いた笑い顔を無視し、再び就寝している少女を見やる。

 どいつもこいつも狂ってる。

 本当にここは現実なのか?

 自分はとっくに死んであの世に逝っているのではないか?

 地獄。

 まさにそう表現するしかない。

 






 空軍の戦闘機F-16が護衛航空する中、なにやらヘリのコックピットが慌ただしくなってきた。

 「おい、今、前方を何か通り過ぎなかったか?」

 ヘリの操縦をしていたパイロットの1人が隣のパイロットと何やら話をしていた

 「ん? レーダーには何も反応がないぞ」

 その様子に疑問を抱いたレンジャー連隊の軍曹がコックピットに近づいた。

 「おい、どうした? 何があった」

 パイロットに話しかけると

 「え、ええ。何かの影が前方から・・・」
 
 瞬間、前方付近を飛行、護衛に附いていたF-16が唐突に爆発した。

 ヘリはそのまま爆発の衝撃波の中に巻き込まれ激しく揺れ、けたましい警報音が機内に鳴り響いた。

 「何だっ!!? 敵襲かっ!!?」

 「わ、解りません!! 操縦がっ!?」

 爆発の余波で故障したのかコントロールがおぼつかないヘリをパイロットが悪戦苦闘しながら操縦桿を操作していた。

 「メーデ! メーデ! こちらブラウラー04! 操縦不能! 操縦不能! このままでは墜落する!」

 パイロットが大声で無線に叫ぶ。

 「!? 何だ、あれはっ!」

 横回転しながらもなんとか建て直そうとするヘリ。

 しかし滑降してしまう。

 その上空前方に飛翔する黒い影。

 人の様な形をしているが、あきらかに異形の姿。

 鳥を模した金属の翼を背中にかかげていた。

 
 そしてヘリは吹き抜けの山間の谷間に墜ちていった。