コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界の果てで、ダンスを踊る ( No.19 )
- 日時: 2014/11/19 09:08
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: AEu.ecsA)
—15 狩る者、狩られる者
「さあ、始めようよ! 君とボクの死の舞踏会を!!」
アルスラがそう宣言し、徐に両手をかざしアンリに向ける。
と、両腕の装甲が開口し、二機の重機関銃が展開し顔を覗かせると照準が狙い定められた。
「!」
瞬時にアンリは超速でその場から飛び退いた。
途端、凄まじい銃弾の豪雨が地表に襲い掛かってきた。
巻き上がる砂埃と猛襲の弾幕の嵐の中を迅速に駆け廻り躱す白銀の走狗者。
「あはははははっ! 走れ、走れっ!! 立ち止まったら速攻で挽肉になっちゃうよっ!!!」
それを追い掛け空襲する無邪気に笑う飛翔者。
道先にあるすべてを粉々と灰塵に変える轟尽の銃撃。
その烈攻を左右に、時には上下に跳躍し、ジグザグに走りながら紙一重で避け続けているアンリ。
走る先には剥き出しの鋭い高層の岩壁が行く手を粛々と遮り塞ぐ。
「ねえ、そっちは行き止まりだよー? どうするの?」
両腕の機銃を掃射、撃ちまくりながら追撃追従するアルスラ。
徐々に目前に迫る逃げ場を防ごうと立ち塞がり閉ざす岩壁。
だが、アンリは疾走する勢いをそのまま利用して瞬く間に鋭斜な岩板を翔け上がり一際高く跳躍、中空に躍り出た。
「うわぁっ!?」
常人では在り得ない身体能力でジャンプを行い、思わぬ不意打ちに踏鞴を踏むアルスラの上空から交差した二対のナイフで斬り込む。
交差する影。
響く甲高い金属音。
アルスラの両腕の機銃は真っ二つにされ、バラバラに分断された。
「・・・チッ。浅いか」
アンリは些かにも残念そうにはせず、上体をくるりと反転、素早く旋回しながら地上に着地し降り立つ。
「おお〜っ、今のはギリギリ危なかったっ! あ〜あっ、亜珪素合金なのに・・・凄いね、君。もうこれは使えないからいらないや」
アルスラは両腕の半壊した機銃を交互に見て、そして切り離すと無造作に投げ捨てた。
「じゃあ、お次はこれでいこうかな? よいしょと」
左肩の装甲が大きく口を開き、中型の射砲台が組まれ展開される。
瞬時に白光を伴い、猛烈な勢いでミサイルがアンリ目掛けて発射された。
直ぐに近場の岩陰に隠れると同時に巻き起こる衝撃と大爆発。
直撃を受け砕けた岩痕がジュウジュウと赤く溶けだし、いっそうと熱を放つ。
「焼夷榴弾ミサイル、面倒ね・・・」
続々と何発も、次々放たれるミサイル。
その度に素早く疾駆し、岩場を盾に隠れるアンリ。
だが身を防ぐ岩はほとんど無くなり、残され隠れた岩塊をも小さく容赦なく削りだしていく。
敵は常時滞空し、此方の出方を窺っている。
渓谷の岩壁を利用し、先程のように直接狙うか・・・。
いや、恐らく同じ手は通じないだろう。
だが戦い方が無い訳ではない。
アンリは足元に転がる大きめの、掌に収まる程の石を拾い握り締める。
ミシリと腕と掴んだ石が軋みを上げるとアンリは隠れた岩から飛び出て空に浮かぶ敵に向けて大きく振りかぶる。
投擲。
豪速。
速射砲さながらの凄まじさで飛んでいく岩の砲弾。
「うっ!!?」
アルスラはちょうどミサイルを撃ったばかりであり、飛んできた石と割ち合い、衝突し至近距離で爆発した。
「くっ!! 視界がっ!!!」
爆炎と黒煙の渦から慌てて飛び出すアルスラ。
その渦巻く焔と墳煙の中から、唐突に姿を現す銀装の狩人。
鈍色に煌めく刃。
揺らめく炎と白昼の陽光で照らし彩られた二振りの剣。
一閃。
斬り裂いた。