コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界の果てで、ダンスを踊る ( No.28 )
- 日時: 2015/09/19 08:14
- 名前: Frill (ID: jFPmKbnp)
—23 見定めるものは
白を基調とした殺伐とした修練場。
煮え滾るような気迫が溢れ、辺り一面を包み込む。
それらは生き物のごとく跳梁し、二人の幼げな少女から人外の気迫が放出される。
そして急速に少女達の姿形を変貌させていくのが防壁越しの観察室から確認できた。
「・・・ミス・ガブリエラ。これはあくまでも実践想定の模擬戦だと、僕は聞き及んでいたのですが・・・こうなることを貴女は予想していたのでしょう?」
三人の少女の戦いを監視していたアイオーン研究員の一人、枢木怜薙は鋭い視線で隣で同じくこの戦闘を見守っていた白衣のブロンド美女に問う。
「そうね、あの子たちは負けず嫌いだから。・・・だから、こういう結果になり得るという事も考えて無かった訳じゃないのよ」
怜薙の凍るような眼光に臆すことも戸惑うことも無く、彼と所属を共にする女、ガブリエラ・ミカールは冷静にその碧い瞳で眼下で起きている事情を見下ろしていた。
「・・・獣合化術は未だに不完全な未知の技術。貴女の研究が何処まで進化しているのか解りませんが、オリジナルでは無い彼女たちに耐えられるのでしょうか」
怜薙の黒縁眼鏡のレンズにそれぞれ少女たちが映し出される。
「それも踏まえての模擬戦なの。正直、限界値も不安定で実戦での活動記録はほとんど無いに等しいわ。部分獣化するには何も問題ないのだけど」
刻々と変貌する自身の体組織から生成された少女たち。
ガブリエラの表情は研究者然としたもので、ファエルとリエルを捉えるその双眸には感情の変化は見受けられない。
「・・・娘のように想っているのでは・・・?」
怜薙が確かめる様に問う。
「ある意味、娘みたいなものは確かね。でも私の受精卵細胞は使っているけど直接お腹を痛めて産んだ子では無いわ」
ガブリエラの碧眼が冷徹に細められる。
「・・・」
怜薙はそれ以上問う事はせず眼下の少女たちの熾烈なる戦いの行く末に意識を向ける。
(・・・アンリ。君が無事なら僕は・・・)
————願わくば彼女たちに幸、多からんこと。