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- Re: 世界の果てで、ダンスを踊る ( No.3 )
- 日時: 2014/05/17 02:49
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: mEh5rhZz)
—3 暗紅の双演
機銃の掃射が辺りを余すことなく蹂躙する。
宙を無数の熱した薬莢が飛び跳ね、足元を埋め尽くす。
形あるモノは、すべて微塵に破壊され、その存在を痕跡を無意味な固形物の残滓へと化し、貶める。
「化け物がァアアアあああああっっっ!!!! くたばれぇええええェエエエエっっっ!!!!!」
全身血まみれの屈強な兵士が大型のガトリングキャノンを腰だめに構えて、己の眼前に形作る物体を灰塵にモデリングさせる。
やがて機銃の弾は尽きるが、男の指からはトリガーが離れずに空回りする駆動音だけが虚しく響く。
「はあっ・・・はあっ・・・どうだ、化け物・・・チェーンガンフルパックのプレゼントだぜ・・・」
粉塵と硝煙が起ち込め、覆い隠す瓦礫の山を無造作に彩る。
これほどの弾丸の接吻を喰らい、最早昇天しない生物などいるものか・・・いや、死人とて逝っちまうほどのエキサイトぶりだ。
兵士の男は口内の血溜まりを吐き捨てようとし、寸前で飲み込んだ。
「うふふふ、プレゼントだってー! どうしようか、リエル?」
楽しげな少女の声が木霊する。
「あははは、それじゃあ、お返ししないとね、ファエル」
嬉しげな少女の声が響く。
粉煙の中から相対する二対の小柄な少女の影が徐々に浮き上がる。
「「素敵なサプライズをありがとう、おじさん♪」」
瞬間、煙から貫き出でた二組の爪影。
男の左右を目にも止まらぬ疾さで過ぎ去ると、男は今だ廻り続ける機銃と共に、ステーキハウスのサイコロ肉のようにジューシーに赤々と弾け、細切れ飛んだ。
「今の人間で最後だね、リエル」
右手が巨大な鉤爪の赤い髪の少女が言う。
「これで今日の任務は完了だね、ファエル」
左手が巨大な鉤爪の青い髪の少女が答える。
左右対称のように瓜二つな外ハネショートヘアの髪色以外そっくりな少女たち。
纏った黒衣のプロテクタースーツに真紅の雫をポタポタと滴らせ、花も綻ぶ満面の笑みを讃え喜ぶ。
「任務達成最短記録更新だよ! 何かご褒美貰えるかな〜♪」
「新しいオモチャが良いな〜、幾ら刻んでも壊れない丈夫な獲物が〜♪」
まるでクリスマスにサンタの訪れと贈り物を心待ちにし悦ぶ双子の姉妹。
「さあ、早く帰ろう! ママが待ってる♪」
「うん、急いで帰ろう! ママのところへ♪」
そして、彼女たちの姿は渦巻く粉塵のヴェールの奥へと小さくなり、やがて視えなくなった。
少女たちが去った後。
そこには、精肉工場のすべての肉と臓物と血潮を引っ繰り返してぶち撒けたんじゃないのかという瓦礫とのコラボデコレートアートだけが広大に残っていた。
赤一色に飾られた肉山のオブジェ。
その汚物の御馳走に、ひしめきたかる大量の黒い蠅。
彼らだけが、この放置された斬新な赫い芸術をいつまでもブンブンと絶賛の拍手を送っていた。