コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 世界の果てで、ダンスを踊るブレイジングダンスマカブル ( No.39 )
日時: 2016/11/16 21:22
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: l1OKFeFD)


 —34 力の行方(ゆくえ)











 
 白銀の輝きが交錯し、すべてを包む込み現世(うつしよ)を支配する。

 幻想の産物が現実のただなかへと、その姿を現した。


 銀を纏い、浮かび上がる獣————否、それは燐光を放つ鎧に包まれた、戦士、幻影のごとき少女。

 薄白の世界に凛と屹立するその姿は、静寂に満ちた墓標を、あるいは、魂を刈り取る大鎌を連想させる。

 
 冴えた光の下で透き通る、この世のものとは思えない妖(あやか)しい美しさ。

 狼の頭蓋を模した飾り兜。

 細くしなやかな体を覆う極限に抑えられた半甲の鎧。

 少女の大人に成りきらない未熟さと艶やかさを惜しげもなく晒し、同時に強靭な肉食獣を彷彿とさせていた。

 

 まるで物語に語られる『ベルセルク』のよう。





 「————『狂獣化形態(バーサーカーモード)』移行完了」



 
 美しき幽幻なる騎士はゆっくりと眼を開く。

 紅く燈る水晶の瞳が、眼前の黒い大きな虚獣を見据えた。

 

















 「・・・あ、あれは・・・」


 ガブリエラは震える声で驚嘆した。
 

 「・・・彼女だけが到達した獣合化術(ビーストアクト)のさらなる進化、ですよ」
 





 

 怜薙は能面な無表情の顔に僅かな険しさと苦さを加えた。




 人類を異端たらしめる獣合化術。

 そのさらに進化、いや新化ともいうべき『能力』。

 どれほどの力、どれほどの可能性を秘めているのか。

 それは人類を新たな境地に誘(いざな)うのか。

 それとも破滅の道に導くのか。









 (アンリ・・・君の進む道がどれだけの血と嘆き、永劫の贖罪に満ちていたとしても・・・僕は・・・君を・・・)