コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 年増化け猫と依無し少女 ( No.13 )
日時: 2014/07/06 10:22
名前: 一匹羊。 (ID: 5qCSmirc)

 成程、と落ち着いてきた頭で私は呟く。
 救急車を呼んで欲しくない訳だ。
 古今東西、『人でないもの』は当然のように虐げられてきた。私の持っている小説でも、普通とはお世辞にも言いがたいキャラクターたちは多く登場するが、彼らは一貫して世界とは一線を画していた。
 何故ならば、人でなければ化け物扱いはもちろん、現代社会ならば最悪やれ研究だのやれ解剖だのと最悪の結果になりかねないから。
 思ったよりも自分が冷静なことに、私は初めて読書家であったことを自分に感謝した。
 さて、と……どうすればいいんだろう。
 化け猫だからといって彼が死んでしまえばいいというわけじゃない。
 ましてや、研究所や大学の類に連れて行くことは絶対にしてはならない。
 ただ、この時点で人間に対しての治療法を安易に使えなくなったのは明らかだ。今までしていたことももしかしたら彼の病状(?)を悪化させただけなのかも……。と、不安になりながらベッドの方を見ると。

 
 彼はすでに青年に戻っていた。
 ぴょこりと出ていた猫耳もなく、私がドギマギさせたイケメンっぷりが戻ってきている。というより顔面偏差値すごいなこの人……猫?
 あれほどひどかった震えも収まっていて、安らかな寝息を立てている。


 安堵でへたり込む。
 よかった、治まった。それだけで心がいっぱいになる。



 



















 





 今思えばすべての始まりはここだったんだと思う。
 彼が目覚めて、私が混乱に陥るのは、私が後悔するのは、



 もっとずっと、後の話。




 第1章 『淡い思い出と』