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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 年増化け猫と依無し少女 ( No.4 )
- 日時: 2014/05/22 19:57
- 名前: 一匹羊。 (ID: 5qCSmirc)
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窓から差し込む光が眩しくて、目を細める。
いつの間に眠っていたのだろう。暗がりに沈んでいた部屋は、零れるほどの朝日で染まっていた。
こきこき、ぎこちなく動く首を動かして、時計のほうに目を向ける。
まだ四時だ。夏の朝は早い。
開いた窓から顔を出す、誰かがそっと息を潜めているような、静謐を湛えた空。
お母さんはきっとあそこにいる。
眩しいくらいきれいで透き通った笑顔を浮かべて、お父さんと笑ってる。
ちょっとセンチメンタルになってしまった思考を切り替えるように、ぱっと立ち上がる。きっと空を睨む。
「今日も一日頑張るからねーっ! お父さん、お母さん、見ててよね——っ!!」
これが、私の毎日の日課。一日一回、空に向かってメッセージを。
空の向こうにきっといる、5歳のときに事故で往ってしまったお父さんと、五ヶ月前に持病の悪化で亡くなったお母さんに、大好きな二人に、心からのメッセージを叫ぶ。
仏壇に手を合わせるよりも、声とか思いとかが届きやすい感じがする。
叫ぶっていう行為その物も好きだしね。
毎日、結構なボリュームで叫んでいるけれど、どうせご近所さんなんかいないんだから恥ずかしくなんか無い。迷惑もかかってないし。
「っはー、そんじゃ今日は何しようかなぁ……」
目はばっちり覚めてしまって、もともと朝型だから眠くも無い。
ちょうど窓開いたし、掃除でもしようかな、と腕をまくり窓に背を向けたところで。
「ユキ」
凛と張った声が、聞こえた。
振り返った、
瞬間、
まるで、
空から、
降りてくるみたいに——
「迎えに来た」
そこに立っていた青年が、私を抱き締めた。
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