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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 年増化け猫と依無し少女 ( No.6 )
- 日時: 2014/05/27 18:26
- 名前: 一匹羊。 (ID: 5qCSmirc)
「生きてたんだな」
呟く様な、しかしその裏に燃えるほどの熱のこもった声が、耳元に囁かれる。低く錆びた声は、男子慣れしていない私を混乱させるには十分過ぎるほど格好良かった。
目を白黒させる私を気にも留めず、青年は私をなお一層強く引き寄せる。
「16年、俺も考えた。でも、やっぱり何も知らずお前が死ぬなんて嫌なんだ」
瞬間、引き剥がされた。真正面から顔を覗き込まれる。
強い意志のこもった目に、射抜かれた。
「約束の時間は待っただろう? もう良いだろう? お前の傍にいても……ユキ」
……もう。
もう、限界っ!
「……はなし、てぇっ!!」
叫びながら青年を突き飛ばす。
青年は窓側に倒れこんだ。
「誰ですか、ユキって……何なんですか、人の家にいきなりっ」
声を限りにして怒鳴りつける。意味が分からなかったし、知らない人にいきなり抱き締められたことによる恐怖もあった。
すると、呆然とこちらを見ていた青年が呟いた。
ユキじゃ、ないのか……?
逆に私が驚いてしまう。何故なら、その声が余りにも不安げに揺れていたから。
そこで、初めてはっきりと青年の顔が見えた。
灰色と黒の混じった不思議な色の短髪は、くせっ毛なのかふわふわしている。
華奢ですらりとしたシルエットに、線の細い輪郭。
そして、切れ長の瞳。
金の中に黒の瞳孔という、こちらも珍しい色合い。引き込まれてしまいそうな、冷たい揺らめきをたたえていた。
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