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Re: お姫様が恋愛しちゃいけないルールなんてありませんっ! ( No.45 )
日時: 2014/07/14 21:37
名前: もこ (ID: K79nUGBS)

「雨…!」

ドアを開け、嬉しくて高ぶった声が止まる。

「あの…どちらさまで?」

鈴は控え気味に聞いた。

そこにいたのは___

「安伊…鈴様であってございますか?」

綺麗な着物に身を纏った女の子だった。

「良かったら、散歩でもご一緒に」


そう言って彼女は形の良い唇の端を持ち上げた。


ーーーーーーーー




「…はあっ…あと…すこ…し…」

雨揺は苦しい呼吸を整えた。

「鈴に…鈴に…あ…わ…な…きゃ」

うわ言の様に呟く。

いつも鈴に会うために歩いている、短い平坦な道がとても長く感じる。

鈴の家までの道は十分すぎるほど遠く、歩くだけでも疲れていた。

それなのに、走るとなると膨大な体力を消耗する。

「あと…少しで…」

鈴の家が見えた。





…と、鈴が出てきた。

「鈴っ!」

今までの疲れが一気に引くのが分かる。

嬉しい。



彼に伝えなきゃ、大好きって。

その後…苦しくても。




ああ、幸せ…だ。

真のことも忘れられるような気がした。



「す…」

もう一度名前を呼んだ。




呼んだはずだった。

___言葉がでてこない。

なんで。なんでここに。なんでもう、鈴と___一緒にいるの?


日は沈んでいなかった。

彼女は1人で来たの…?

嫌だ。嫌だ。

鈴…気づいて。私、私を。

「鈴は…優を選んだの…?」

自分で言った言葉が棘のように刺さる。

彼は彼女と笑っていた。

その彼女は、私なんかではなく、優だ。

優…美人で大人っぽくて、女の子っぽくて、大人しくておしとやかで。

私は、全然女の子っぽくなくて、煩くて、頭が悪くて、役立たずで。

あたり前じゃないか。

彼が彼女を選ぶ以外なにがある。

「…」

着物の裾を握りしめ、乾いた声で嗤った。

___一番綺麗な着物を着たのに。

___ブレスレットも着けたのに。

___彼を好きだったのに。

行き場のない心がどこにも行かずに、涙と一緒に頬を伝った。