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Re: お姫様が恋愛しちゃいけないルールなんてありませんっ! ( No.47 )
日時: 2014/07/15 22:14
名前: もこもこ (ID: K79nUGBS)

「…それで、優…さん?ですか?なんで俺に…」

「いえ…興味があっただけですの…ええ、また近いうちに会うと思います…」

「何故、俺とあんたが…」

「…運命、で、ございます」

優の瞳が怪しく光った。

「鈴様は、もう、私のものですわ…気に入りました。ああ、そうそう。忘れていましたか…?あなたは…安伊家の長男、にございますね?」

…怪しい女だ。

鈴は呟いた。

何故忘れようとしていることをわざわざ言うのか。

過去を。

「まさか…忘れたとは言わないでくださる?まあ…後ほど…名前だけでも覚えていてくださると光栄にございます」

…ニヤリ、と彼女は笑い、鈴の口元に手を伸ばした。

そして、

「我が…愛しき主様____」


ーーーーーーーー

足が重たい。

胸が、痛い。

雨揺は痛みに呻き、その場にしゃがみこんだ。

目を瞑った。

全てが見えないように。

そっと顔を上げる。

済んだ彼女の瞳に写ったのは…

彼を抱き寄せる、優。

先ほど止まったばかりの涙がまた伝う。

何故ここまできてこんな想いを…なんで苦しいなんて…

「鈴…」

雨揺は真っ直ぐ遠い彼の目を見つめる。

さよなら…と。

____ッ。

目が…合った。

合ってしまった。

離れられなくなる。

いまのうちなら、逃げられる。

逃げられるのに。

「なん…で…」

雨揺の足は地面にへばりついたまま、離さない。

彼が歩いてくる。

優は、こちらを優しそうな顔で見つめて、鈴の家の中に入って行った。

「雨揺、会いたか___」

「やめて」

言ってしまった。

「優は優しいし美人だしね…言葉使いだって丁寧だし、鈴には丁度いいんじゃない?」

「何言って____」

「やっぱり、私なんかより…」

「雨揺!」

強引に腕を掴まれ、立たされる。

着けたブレスレットがしゃらりと音を鳴らした。

そのまま、抱き寄せられ、背の高い鈴が雨揺を覆う。

「離し…」

「雨揺、俺が優さんを好きだとでも?」

「…そうだよ!それ以外…それ以外なにが…!」

次の鈴の動作により、雨揺は完全に動きを封じられてしまった。

_____キス。

生温い感触。

彼の体温が伝わる。

彼の舌が私の舌を絡め取り、不思議な感覚が引き起こされる。

…一瞬、唇が離れる。

その瞬間で思想を追いつかせ、彼の腕を払う。

が、彼は雨揺の手を取り、再び抱きしめる。

前の私だったら、それを好んでいたかもしれない。


でも______


「やめて」

するりと鈴の懐から逃げ出すと、雨揺はきびすを返し走り出した。

「雨揺!」

凛とした声が雨揺を追いかける。

止まってはいけない。

駄目だ。

「雨揺!」

鈴はもう一度、私の名前を呼んだ。

…立ち止まってしまう。

「___っ!」

思わず止まろうとしてしまった時。

目の前に見慣れた姿が映った。

「雨揺さま___」

その人は私をそう呼んだ。