コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 海と空〜短編集〜 ( No.20 )
- 日時: 2014/12/27 20:19
- 名前: みにょ (ID: 3HjnwYLE)
【私は彩香ちゃんが嫌いだ。】
1-1 (一つ目のお話の一話目という意味です)
私はすぐに泣く彩香ちゃんが嫌いだ。彩香ちゃん……池田彩香は同じクラスの女の子で、転んで泣く、友達と喧嘩して泣く、先生にちょっと注意されて泣く子だった。
物事は泣いても解決なんてされない。どうせ周りの人に見てもらいたいだけなのだろうし、泣き虫、弱虫、意気地なしの三つが揃った彩香ちゃんのことを、私はどうやっても好きになれなかったのだ。
そんなある日。学年でも有名な悪ガキの男子が、廊下で彩香ちゃんとぶつかった。男子は機嫌が悪かったらしく、彩香ちゃんを睨みつけた。
「ってぇーな……。邪魔だ、どけよ」
男子がそう言うと、彩香ちゃんはひぃっと声にならない声をあげて泣き出す。ちょうど通りかかった私は、それを見てしまった。
「ご、ごめんなさいっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!」
彩香ちゃんが半分土下座になりかけて謝ると、男子は舌打ちをしてから歩いて行ったようだ。彩香ちゃんは床に座り込み、ボロボロと涙を零している。
「なんで泣くの?」
私は思わず、彩香ちゃんに尋ねた。泣いてる奴を見ると、やっぱりどうもイライラする。すると彩香ちゃんは、制服の袖で涙をぬぐいながら答えた。
「こ、怖くて……。ごめんなさい……」
怖いと泣くのか、こいつは。
私の心が黒く染まっていくのがわかった。止めなきゃ止めなきゃと思っても、口は勝手に開き、心ない言葉を紡いでいく。
「わけわかんないよ。泣いても何も解決しないじゃん。弱っちいだけ」
「ご、ごめんなさいっ……!自分でも泣いちゃ駄目だってわかってるんだけど、どうしても怖くて……!」
彩香ちゃんがさらに涙を零し、それに比例するように私はさらにイライラした。まるでどうしようもない感情が、心の中を気持ち悪いくらいにぐるぐるかき回しているみたいだ。
「わかってんなら泣かずにできるはずだよね?今ここで泣き止んでよ」
相変わらず泣き続ける彩香ちゃんに、私は冷たくそう言う。彩香ちゃんはそれは……とうつむき、どうやら出来ないようだと私は勝手に確信した。
駄目だ、やっぱり私は冷たいことしか言えない。
「なんだよ、泣やめないじゃん……!
彩香ちゃんの嘘つき!」