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Re: 海と空〜短編集〜 ( No.29 )
日時: 2014/12/27 17:40
名前: みにょ (ID: 3HjnwYLE)

2-4

昔のことだが、私たち兄妹はよく自転車に二人乗りして、どこかへ遊びに行っていた。色々とドジだった当時の私の話を、兄は自転車をゆっくり漕ぎながら話す。
「あの頃は可愛かったなぁー」
「あっそ」
兄の背中につかまり自転車から落ちないように座ると、冷たい秋の風も、兄の背中の暖かさで気にならなかった。
二人乗りで発見したのは、兄が高校生くらいだった頃よりも細くなっていたことだ。前は腕を回すとほどほどの筋肉があって、頼もしい感じがした。しかし、今は筋肉も落ちているし、元々痩せていたからか、少し頼りない。
「ねえ、本当にどこ行くの?」
まだ行く場所を聞かされていない私は、車の音にかき消されないように声を張り上げて聞く。すると兄は少し後ろを振り返り、へらっと笑った。
「イライラとか、辛いこととか、全部吹っ飛ぶようなところ!」
まるで中学生みたいな、眩しい笑顔。大学生とは思えない幼い表情に、私はほんの少し呆れる。それじゃあ答えにさえなっていない。
「ほら、もうすぐだぞー」
兄がそんなことを言ってスピードを上げた場所は、まあまあ大きめの坂だった。確かこの坂を登っててっぺんに行くと、すぐに下り坂になっているはずだ。
こんな坂、二人乗りで登れるわけがない。
最初の方こそそう思っていたが、兄は昔からわけがわからないことをやって見せる人間である。よく言えば不可能を可能にする人。悪く言えば先を見ないただのアホ。そんな人。
「っしゃぁぁぁ!着いたぁぁぁ!」
だから今日も、結局坂のてっぺんに着いた。ふわっと体が浮くような感覚が一瞬して、いつか乗ったジェットコースターが思い浮かぶ。
その後はあっという間だった。すーーーっと風を切って坂を下る。時刻は午後5時。秋の空はもう夕暮れで、静かな街がオレンジに染まっていた。

オレンジの街を眺めながら風を切り下るのは、ありえないくらいに気持ちいい。

「すごい……すごいね、兄ちゃん!綺麗!」
思わずそんな言葉が漏れる。見せたいところとは、きっとこのことだったのだろう。
こんなにも世界は広くて、綺麗で。
こんなにも私はちっぽけなものだったんだ。
「綺麗だな」
お兄ちゃんが返す。私は自然と溢れてきた涙が後ろに流されていくのも気にせずに立ち上がった。
「風が気持ちいい!」
「気持ちいいな」
「なんか、夢みたいだねお兄ちゃん!」
「あぁ、夢みたいだ」

「ねえお兄ちゃん!」

「はいはい、今度はなんだよ?」

「連れてきてくれてありがとう!絶対高校受かる!あたし……頑張るよっ……!」

「あたりめぇだろ。頑張れ」

「お兄ちゃん、多分、今までの勉強も、全部無駄じゃ、無かったんだよねっ?」

「おう。人生一秒たりとも無駄な時間はない。ただ、もったいないのは……」


俺から言わせれば、お前や母さんが笑ってない時だ」

「……うんっ……!あたしも、お兄ちゃんが笑ってるのが好きだよ……!」
私はその時、泣きながらも、とても久しぶりな笑顔になれた。



【たまに書くあとがき】
どうも、作者のみにょです!
私は今中学一年で、受験の辛さはよくわかりません。てか勉強大嫌いです。
でも、先輩たちが頑張ってるみたいなので……。

中学三年生のみなさん、高校三年生のみなさん、勉強で悩んでるみなさんに。
ファイトーーーーーー!!!!