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Re: 海と空〜短編集〜 (なんか色々募集中)参照300突破感謝!! ( No.38 )
日時: 2014/12/30 12:27
名前: みにょ (ID: 3HjnwYLE)

4-3

あれから数ヶ月がたった。
町はもうお正月ムードで、所々で鏡餅やらなにやらが飾られている。中学も冬休みに入ったし、私は暇を持て余していた。
しかし、今日は雨。
もうあの日みたいには走らないけれど、走ったらまた会えるかなぁなんて思ったりする。でも多分、夏休みしか来ないんだろうなぁ。
雨で濡れたまっすぐな黒髪に、同じくらい澄んだ大きな瞳。優しい声と言葉。
「……何考えてんの私……?!」
彼のことが忘れられない。
そんなことを思っていたから、私はその時すでに……。

恋に落ちていたんだーーーーーーーー




それから更に数ヶ月。彼と出会った夏休みから、ちょうど一年が経った雨の日だった。
中学二年生の夏休みというのは部活も忙しいもので、試合とか練習試合とかで最近は筋肉痛がひどい。
運動は苦手じゃないけど、得意でもないし好きでもない。ただなんとなく、今の運動部に入ってしまったのだ。それがしっぱだったかどうかは、まだわからないけれど。
今はその忙しい部活の帰り道である。隣町の中学へ練習試合に行ったのだ。友達はもうみんな帰り道が違くて別れてしまったから、一人で。

こんな雨の日は、彼のことを思い出す。

傘もある、濡れてない、転んでない、走ってない。
こんな普通の私だったら、彼に変な人とは思われないだろうし、去年の変な出会い方ではなくなるだろう。
まあ、そんな運良く彼が現れるわけではないし。
そう思った矢先だ。

少し遠いが、信号が青に変わるのを待つ、一人の男の子を見つけた。
黒髪で長さも同じ。あのダルそうな立ち方も同じ。そう、彼と、同じ……。
そんな私を急かすように、車の方の信号が黄色に変わった。

「待って!!」

私は弾かれたように走り出した。

あの男の子が彼だって、どうしてわかったの?
心の何処かが問う。
わかんないよ、わかんないけど、ここで走らなきゃきっと後悔するから。

歩行者用の信号が青に変わり、男の子は横断歩道を渡し始めた。
「待って……待ってっ……!」
いやだ、行かないでよ……。

もう、周りなんて見えてなかったんだ。
……それが、いけなかった。