コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

序章 hum ( No.4 )
日時: 2014/06/11 14:53
名前: りお (ID: jX/c7tjl)

———音楽の中に幸せを見いだすことは、
運命によって決められていたのです
アルマ・シントラー=マーラー


—小さい頃から歌うことが好きだった。
どんなに辛い時でも歌うと気持ちが軽くなり、心が解放されるみたいだから。
歌手になれるほどの実力はないから、趣味程度に動画サイトに自分で歌ってみたものをupしたところ、運良く芸能プロダクションから声をかけてもらえた。
歌手になることにほんの戸惑いがあったが、せっかくの機会なのでその話を受けてみることにした。
スカウトを引き受けたからといってすぐに歌手になれるわけではない。
有望なハイレベルな研修生はごまんといて、その中からメジャーデビューへと勝ち上がらなければならない。トントン拍子でいける天才もいれば、努力でデビューのキップを手にする者がいる。
自分はデビューまで約二年かかったので、どちらかというと早いらしい。
そんなこともあって、研修所の先輩には嫌われていたと思う。
——いいなぁ、どっかの天才ちゃんは。気に入られてもうデビューかぁ
——お偉いさんにでも媚び売ってるんじやないの?大して可愛くも綺麗でもないから。
——貴女のせいで……!!
そんな嘲笑と罵倒がいつからか毎回耳にするようになった。
想像以上に芸能界の仲間入りになるのは厳しくて苦しい。
それでも歌うことは辛くはなかった。むしろ心の支えになっていた。
確かに傷付く言葉を吐かれて散々陰湿なこともされた。
だけど、

——奏は頑張り屋だから皆に認められたんだよ。もちろん才能も必要だけど、それよりも努力が大事だから、ね?

——唯一無二の同じ夢に向かって励まし合える親友がいたからこそ、挫けずに今までやっていけたんだ。
そう胸を張って言える。

自分の夢を応援してくれた人達のためにも、歌で恩返しをしたい。