コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: SCORE ( No.8 )
日時: 2014/11/05 18:51
名前: 咲奏 (ID: ZfgN7XgD)

〈3ページ目〉

「日下を軽音部に入れる!!それが今後の俺たちの課題だ」

沈黙。すごく静か。
めいも遥斗も、口を開かない。

と、いうことは、

「じゃあ、決定でいい!?日下を入れること」
「……無理だろ」

はぁ、と遥斗が溜め息をつく。
めいも、遥斗に賛成だと言うようにうなづいている。

「何で?これで文化祭で、『あの曲』ができるようになるんだぞ!」

二人が反対でも、それだけは譲れない。

「私だって、みんなと演奏したいよ。でも、合唱部はもうすぐコンクールだし……私、その、仲良くできるか心配だし」
「え、コンクールなの!?」

俺はそんなこと知らなかったのに、何でめいは知ってたんだ?
そんな俺の気持ちを汲み取ったのか遥斗が「先生が全国にいくって言ってただろ」と呟いた。

「だからって、何もしないのかよ!?じゃあ、俺が日下を連れてこれたら文句ないな?」
「……勝手にしろよ」

もう練習するから、そう言って遥斗は席を立ち、ベースのところへ歩いていった。
めいも、がんばってね、と言って遥斗を追いかけていった。

俺も、部室を飛び出し、合唱部のいる音楽室へと走っていった。


***


新館二階の音楽室で、合唱部は練習している。
広い特別教室だと、音がよく響くから羨ましい。
でも、それも日下のおかげらしい。

日下が合唱部に入った去年、合唱部は悲願だった全国優勝を成し遂げた。
その結果、優秀な合唱部には音楽室が与えられたらしい。

やっぱり、日下に歌ってもらうしかない。
あ、でも、どうやって勧誘しようか。

やっぱり無難に「文化祭で俺たちと一緒に歌ってくれませんか」とか。
あ、よくある漫画みたいに、「俺たちと共に来ませんか?」とか。

どうしようか……、と悩んでいた時だった。

「あの……合唱部に何か用ですか?用もないのにいるなら、邪魔なんですけど」
「へぇ?人が急に!?」

突然後ろから話しかけられ、変な声が出てしまう。
振り向くと、綺麗な黒髪ストレートの、美人。というよりは可愛い。
目も大きく、手足も細くて、儚い感じがした。

そんな彼女は、不思議そうな顔でこっちを見ている。

「あ、はい。合唱部の、日下さん、に用があって」
「日下は私ですよ。何の用ですか?」

え、まさかの本人?
あれ、俺さっきまで何考えてたっけ。
確か、

「文化祭で俺たちと共に来ませんか!?」
「は?」

あ、間違えた。
日下は、頭がおかしい奴を見るような顔になっていた。
まあ、そうさせたのは俺なんだけど。

「えーと、文化祭を一緒に回ってほしい、ってことですか?」

なんか、誤解されてる。

「いや、違うんです。俺、軽音部の者なんですけど、今ボーカルがいなくて……。だから、貴方にボーカルを頼みたいんです」
「は?無理ですよ。馬鹿言わないで」
「え!?」

あれ、キャラが変わった?
俺の中で、彼女に対する『可愛い』『儚い』が崩れた。

「私たち合唱部は、あと一ヶ月でコンクールです。その練習で忙しいのに貴方たちと一緒に文化祭?ふざけないで」

日下の目は、鋭く、冷たい。
正直言うと、怖い。

「合唱のよさもわからないくせに、変なことは言わないで。私、練習に行くので。失礼します」

そう言って日下は音楽室へ入っていった。
一人取り残された俺はどうすることもできず、その場に立ち尽くしていただけだった。