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Re: SCORE【参照550感謝】 ( No.15 )
日時: 2015/04/07 00:20
名前: 咲奏 (ID: OtfUnLOH)



〈6ページ目〉



合唱部の部長、日下弥生。
彼女が、我らが軽音部と一緒に文化祭のステージに出てくれると約束してくれた。

「あいつら、どんな顔するかな……?」

さっきまで「無理だろ」とか言ってたからな。
きっと皆、馬鹿みたいな顔をするだろう、俺を見直すだろう。

「あぁ、楽しみ……あれ?誰か喋ってる」

軽音部の部室には、まだ明かりがついている。
そしてそこからは、楽器の音ではなく、笑い声が聞こえていた。

……気になる。
ドアの隙間から、部室を覗く、と、

「で、さっき女の子に振られたみたいな顔で音楽室の前に立ってたんですよー、桐谷先輩が」
「あはは、桐谷くんらしいね」
「全くだ」

部員3人が笑いながら話していた。

話題は……俺の笑い話。

しかも

「水無月来たのかよ!?」
「あ、先輩……ぷすっ」
「桐谷くん!?」

あれ、居たの?っていう顔を全員がした。
酷くない?
水無月に至っては、俺の顔を見た途端に吹き出した。

「あ、じゃねぇよ!!普段来ないくせに」
「いやぁ、こんな面白いこと、伝えないと勿体ないでしょう?」
「はぁ!?いいよ、もうそんなので笑えない位驚くこと言ってやるから!!」

そう言って水無月を指差す。

「どうぞ、言ってみてくださいよ」

水無月が馬鹿にするように言った。
一応、俺は先輩であり、この部の部長なんだぞ?

「指差したらダメだよ?」というめいの声が聞こえた気がする……が、俺は気にせず言った。

「実はな、日下が、日下弥生が俺たちと歌ってくれることになったんだ!!」

そして大きくVサイン、決まった。




「は? 嘘は止めろよ、桐谷」

遙斗が汚いものを見るような目で言った。
めいは、遙斗の言葉を聞いて意味がわかったのか、顔が途端に青くなった。
流石の水無月も、口を大きく開けて、何も言えない様子だ。

「嘘じゃない、本当だって」
「じゃあ、明日連れてこいよ」
遙斗が言った。

「—解った、絶対連れてくるから、信じてくれ!!」
勢いで俺も言う。

しばらく無言で俺を見ていた遙斗は、肯定の意を示すように頷いた。

「どうしよう、私、心の準備が……」
めいが呟く。

「明日かー、サボろうかな」
「駄目だ!! お前も来いよ?」
えー、と文句を垂れる水無月に念を押す。

「じゃあ、明日から、文化祭の為に練習するぞ。では今日は終了!!」

これ以上遅くまでいると、先生に怒られるから、部活は終えて帰ることになった。


明日からがとても楽しみだ。
『あの曲』を、文化祭の舞台で。
最高のメンバーで。

希望が、現実に変わろうとしている。


***


「うわぁ……女子がいっぱい……」

次の日の放課後、部活が始まる前。
俺は日下のクラスの前にいた。

昨日の約束—「日下を連れてくる」

失敗すると、俺が嘘つきみたいになるからな。
昨日の経験から、合唱部前にいるのは危ないと思った俺は、部活が始まる前、教室に呼びにくることにした。

ドアの前には、何人もの女子が。
彼女等の隙間から教室を覗いていると

「ねぇ、誰か呼びに来たの?」

その中の一人に話しかけられた。
これは、もしや、呼んでくれるチャンスでは?

「あ、はい、日下さんいますか?」
「え、日下さん!?」
「どういう関係?」
女子達が騒ぎだした。

「いや、部活の用事です」
何で騒ぐのか解らない。

「あ、そうなの? 日下さーん、桐谷くんが呼びに来てるよー!」

一番ドアに近い女子が、大きな声で日下を呼んだ。

教室の中から、「ふぇ!?」という、少し間抜けな声が聞こえる。
この声は、日下?
昨日の様子が嘘のようだ。

もう一度教室を覗くと、真っ赤な顔の日下が出てくるのが見えた。

「桐谷!?何で来たの!?」

日下が動揺しているように見える。
何でだ?

「あ、えっと昨日の軽音部の件で、今日来てもらいたいんだ」

俺がそう言うと、

「あ、そのこと? 何だ、そのことだったんだ」

少し残念そうな顔をした。
何故だ?

「で、今日時間ある? できれば早い方が」
「いい、今すぐ行く。案内しなさい」
そう言って日下が俺の前に立つ。

「案内して」
「う、うん、わかった」

あれ、元の日下だ。
さっきはどうしたんだろう?

「桐谷!!はーやーく!!」
「ご、ごめん!!」

やっぱこっちの方が似合ってるな。
そう思いながら、俺は日下に引っ張られて行くのだった。