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Re: 陽の当たる部室 ( No.3 )
日時: 2014/06/10 10:53
名前: 藍里 ◆dcuKuYSfmk (ID: IfRkr8gZ)

三話 別れ(前篇)

千沙は、大柄な少年——佐藤裕也(さとうゆうや)を、部室へ通す。
「千沙、話って?」
「……ちょっとね」
千沙は微笑み、部室の鍵を中から閉めた。
「れーちゃん、陽介」
「遅いですよ、千沙先輩」
玲が、カーテンの裏から現れた。
「あれ、その人ですか? 浮気した人」
陽介がニヤニヤと笑いながら、本棚の裏から現れた。
「そーそー。ね、分かるよね、裕也? あなたがここに居る意味」
千沙は、裕也に向かって微笑んだ。
その笑みは、黒く。そして、美しかった。

「ねぇ、裕也。私、一か月ほど前から知ってたの。貴方が私の親友と、浮気してたってこと」
千沙は、写真を並べる。
「誘ったのは、貴方からだってね? 親友——雪が言ってた。雪はね、全部教えてくれたの。貴方が言った言葉も、貴方と行った場所も、全部」
千沙は、自分の唇を噛んだ。
「私……馬鹿みたいじゃない。私ばかり好きで……大好きで……。裕也も、私のこと好きだって思ってた。少しでも、想ってくれてるって信じてた」
千沙の茶色い瞳から、透明な液体が零れ落ちる。
でも、と彼女は呟いた。

「それは、瞞し(まやかし)だった」

「千沙っ……!」
裕也の言葉を、千沙は手で制す。

「言い訳なら聞いてあげる、言って」

千沙の声は、驚くほど冷酷だった。