コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 活動3 ウィークエンド・シャッフル ( No.12 )
- 日時: 2014/08/05 11:48
- 名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)
一義がチェルシーに歩み寄った。
「随分探したよ、さぁ戻ろう」
手を差し出すと、チェルシーは手を払いのけた。
「私は戻らない、もっと小百合たちと遊びたい」
チェルシーは少し涙ぐんでいた。
「チェルシー……」
小百合が複雑そうに呟いた。
すると、遠くからダニエルと元治、
学長や陽子が走り寄ってきた。
どうやらおっさんが連絡を入れたらしい。
「探したぞ、さぁ早く戻るぞ」
ダニエルがチェルシーを無理やり連れて行こうとする。
「やめて!」
チェルシーが嫌がる。
「ちょっと、嫌がってるじゃない」
小百合が手を払いのけようとした。
すると突然、チェルシーは小百合の後ろに回りこむと
小百合の首元にナイフを突き出した。
「パパの言うことなんてもう聞かない、
私を自由にしなければ小百合を殺す」
チェルシーの目は本気だった。
「私はいつも孤独だった、仕事ばかりしていたせいで
友達と遊ぶことも出来なければいつも記者達に付け狙われていて
平和な日常も過ごせなかった
でも今こうして幸せを手に入れたの、
もう絶対離したくない!」
「それが友達に対する態度か?」
一義が呟く。
「自分の欲望の為なら友達に何をしてもいい、
そんな考え方がまかり通るとでも思っているのか?
そいつはオレの大切な友達同好会の一員なんだ」
「ちょっとぉ、私はあんたとは友達じゃないわよ」
小百合が一義に叫んだ。
一義はそれを聞き流しながら続ける。
「そんなバカなことをしなくたってオレはあんたを
友達として認めてやるよ、
だからもうやめてくれ!
頼む、友達だろ」
一義が懇願した。
「うぅ……」
チェルシーはナイフを地面に落とすと、
その場に泣き崩れた。
「大丈夫、小百合ちゃん?」
キャロルが小百合に尋ねる。
「うん……」
「さぁ帰るぞ、お前にはこれからも仕事がまだ残ってるんだ」
ダニエルが無理やりキャロルを立たせようとした
次の途端、おっさんがダニエルの顔面に張り手をした。
「娘の悲しみや苦しみにも気づかねぇで
目の前の金のことばかりが大切か?」
おっさんの声は小さくも力強く、
その口調からは怒りも感じられた。
「さぁ、チェルシーが今どんな気持ちかわかるだろ?」
おっさんが言い放つと、ダニエルは
チェルシーを抱きしめた。
「私が間違っていたよ、チェルシー……」
「パパ、私もごめんなさい……」
周囲が明るい拍手に包まれた。
一週間後、チェルシーは元治の病院のコマーシャルを撮影後、
帰国の途に着いた。
「おい、チェルシー・スチュワートが芸能界引退だってよ」
新聞を読んでいた元治が一義に話しかけた。
「普通の女の子になりたいんだとよ」
「そうだよね、これからチェルシーはたくさん友達を作っていくはず」
キャロルが微笑んだ。
「そう、チェルシーはこの同好会の部員だもん」
小百合は壁にかけられた
あの日のあの騒動の後に撮られた集合写真を
指差して笑った。
その写真の中央にはチェルシーが満面の笑みで
小百合たちと写真に納まっていた。