コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 活動5 深海より愛をこめて ( No.23 )
- 日時: 2014/08/18 00:44
- 名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)
城のロビーで一義たちは手厚く
もてなされた。
ロビーの近くの水槽では美しい
人魚達が歌やマジックショー、
ジャグリングなどのショーを展開し、
アイスキュロスや他の海亀たちが
マグロの刺身やキャビア、クラゲの刺身などの
様々な海鮮料理や高級なジュースで一義たちを
手厚くもてなす。
「本当に楽しい場所だね、一生ここに
住みたいね」
絹恵が一義に話しかける。
「そ、そうだな……」
一義だけはこの空間を楽しめずにいた。
どうもあのアリエンのことが気になるのだ。
「あれっ、アリエンさんはどこ行ったんだろう?」
刺身を食べながら小百合が元治に尋ねた。
「確かにいないよな……」
元治が周囲を見渡していると、ロビーの奥から
アリエンの姿が現れた。
「そ、その足どうしたんですか?」
キャロルがアリエンに尋ねる。
さっきまでの魚の体ではなく、
すらりと伸びた足にスカート姿だった。
その姿を見た一義は何かを思い出したような
表情をした。
「ま、まさかアリエンって……」
何かを思い出したようだ。
アリエンが一義の隣に座った。
「お久しぶりですね、赤塚一義さん」
「えっ、どうして一義君の名前を覚えているの?」
絹恵が不思議そうにアリエンに尋ねる。
「実は私、一義さんに恋をしていたんです」
アリエンが少し寂しげに呟いた。
一義が回想を始める。
今から五年前、中学生だったころにも
一義はこの海に訪れていた。
魚釣りをするために釣り船に乗っていた一義は
足を滑らせ海に落ちてしまった。
「助けて、泳げない」
もがき苦しむうちに一義はどんどん沈んでいき、
意識が遠のいていった。
次に意識を取り戻したとき、一義は砂浜に倒れていた。
「た、助かったのか……」
奇跡的に助かったのだが、誰が助けてくれたのかは
最後までわからなかった。
それから一ヵ月後、一人の女の子が
一義の中学校に転校してきた。
全くしゃべれない子だった。
その子はアリエンだったのだ。
それからというものの、アリエンは
一義にいつもアプローチをしていたが、
全く口が利けず、いつも喋らなかった。
そんなある日の放課後、アリエンは一義に
寿司を作って来ていた。
しかし、それを食べた一義はとんでもない言動の
オンパレードだった。
「なんだよ、寿司ワサビ入りじゃん
オレサビ抜きじゃないと食えないの知らなかったか?」
一貫だけ食べると、もう手をつけなかった。
アリエンは無言でもう一貫勧めてきたが、
一義はそれを払いのけ怒鳴りつけた。
「なんでいつもそうやって付きまとうんだ、
言いたいことがあるなら言えよ!」
アリエンは泣きそうな表情で一義を見つめる。
「じゃあ言ってやるよ、あんた生臭いんだよ!
なんていうか、魚の臭いが酷い」
アリエンは泣き崩れた。
翌日、アリエンは姿を消すと、
もう学校に戻らなかった。