コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 活動6 ロゼ・マドモアゼル ( No.26 )
- 日時: 2014/08/19 14:50
- 名前: コベントリー・プディング (ID: DdpclYlw)
「お前にいいものあげようか?」
いつもの部室でおっさんが突然、
ソファで元治と野球盤で遊んでいた
一義に笑顔で話しかけた。
おっさんがポケットから一円玉を取り出した。
「この一円玉はすげぇんだ、
裏のデザインが表に、表のデザインが裏にあるんだ」
「おい、それって……」
元治が怪訝な顔をする。
「すげぇじゃん、それって」
一義が顔を輝かせた。
「だろ?
こいつをお前に千円で売ってやる」
一義は財布から千円札を取り出すと、おっさんに渡した。
「毎度あり」
おっさんが一円玉を渡した。
その日、一義は元治の運転する
マセラティ・クアトロポルテ(イタリアの自動車メーカー
マセラティ社が生産する高級セダン)の
助手席に座っていた。
一義の手にはさっきの一円玉があった。
「なぁ、もしかしたらこれって凄い高いものだったりするかな?
ちょっと質屋寄っていこうぜ」
一義が元治に質屋へ行くよう促す。
一義と元治が質屋に入る。
質屋の店に入るとすぐ横に、170センチほどの
大きな人形があった。
肩まで伸びた金髪に透き通るような白い肌、
かわいらしいドレスを身にまとい
どこか悲しげな表情をしている。
「随分でかい人形だな」
一義が人形を見つめる。
「ビスク・ドールさ」
元治が答える。
「陶器でできた人形で、昔ヨーロッパの
貴族の間で流行していたんだ、
でもこんなに大きいのは珍しいな」
「まぁどうでもいいじゃん、目的はこれじゃないだろ」
一義が店の奥に向かった。
「これ、いくらになりますか?」
一義がのカウンターの店主に
一円玉を突き出した。
「一円だけど、ふざけているなら
帰ってもらうぞ」
「そんなことあるか、これは裏のデザインが表に、
表のデザインが裏にあるんだ」
一義が反論する。
「だからただの一円玉だぞ」
「やっと分かったか、お前は騙されたんだよ」
元治が笑った。
「絶望した!」
ショックを受けた一義は、近くに置かれていたベルトで
首を吊ろうとした。
「バカ、それはナポレオンが愛用したベルトだぞ」
店主が必死に止める。
「それ信じてるのかよ!」
一義が店主に呆れる。
「何をやっているのかね君たちは」
店に入ってきた一人の男が一連の行動を見て
絶句している。
「が、学長!」
男の正体はギャバン学長だった。
「ここは子供の来る場所ではない、帰りなさい」
学長が一義と元治を追い出す。
「久しぶりに絵画でも買おうかと思ってね」
学長が店主に話しかける。
芸術品のコレクションが趣味の学長は
よくここを訪れているらしい。
「ところで、これは美しいビスク・ドールだね」
学長がビスク・ドールに歩み寄る。
すると、どこからかこんな声が学長に聞こえた。
「私を買っていただけません?」
「何か言ったかね、店主さん」
学長が尋ねるも、声の主は女性だった。
「このビスク・ドール気に入ったよ、買わせてくれ」
学長は店主に金を渡すと、そのビスク・ドールを
愛車の助手席に乗せて帰った。